NHK「ブレイブ 勇敢なる者 硬骨エンジニア」を見て

11月23日にNHK総合で放映された「ブレイブ 勇敢なる者『硬骨エンジニア』」は、半導体記憶媒体「フラッシュメモリ」の生みの親、元・東芝社員の舛岡富士雄氏と開発チームの個性的な面々が主人公の、みごたえのある番組でした。

NAND型フラッシュメモリは、いまや家電製品、スマホ、自動車などあらゆる製品に使用される不可欠な部材で、枡岡氏とオリジナル開発メンバーの国際的評価はものすごく高いのですが、日本国内では知名度がいまひとつです。また、退社した枡岡氏が特許使用の対価として10億円の請求訴訟を東芝に提起したことから、反逆者のイメージを抱く方も少なくありません。

「東芝への恨みはなく、むしろ感謝している」、「(裁判の話も)ありがとうと、ひとこと言ってもらえれば終わりなんです」という枡岡氏の言葉が印象的でした。技術立国と言われながら、それを支えてきた技術者の評価が高くない日本の社会で、世の中を支える技術を開発したエンジニアの誇りや尊厳、正当な対価とリスペクトを訴えた行動であることがよくわかりました。

天才肌のリーダーの超越したマネジメントに振り回された開発メンバーが、舛岡さんの功績をきちんと伝えたいという気持ちで、きつかったけれど楽しかった、あんな人は二度と現れない、と熱く語り合う姿に見ている私も胸が熱くなりました。イノベーションが生まれる現場の真髄を見た気がします。

この番組を拝見して、開発、生産、営業の現場をねぎらう、感謝することの大切さを改めて再認識しました。私が出会った製造業の工場勤務の課長さんで、部下の工員さんからの信頼が飛び切り厚いMさんがいます。「どういう気持ちで仕事にあたっているのですか?」と私が質問したところ、Mさんは「みんなが一日の仕事を終え、それぞれの自宅に帰り、家族と楽しく夕食をとるまで見届けるのが自分の仕事と思っています」と答えてくれました。

昨今の企業不祥事で、「経営・管理層と現場との距離」に注目が集まっていますが、現場の努力を評価・感謝する、現場の限界を理解して先手管理する、といった姿勢が経営・管理層に足りないことが問題なのだと思います。経営・管理層が階級社会を作り、出世競争に血眼になれば、現場の無力感、あきらめは、ますます強くなるでしょう。東芝の元経営トップが裸の王様になったのも、そうした背景があったように思います。

「ブレイブ 勇敢なる者『硬骨エンジニア』」、見逃した方は、ぜひオンデマンドで見てください。おすすめです。