全国一律配送料の値上げカルテル

近畿地方を中心に営業する百貨店6社が、中元歳暮等のギフトの全国一律配送料を200円から300円に引き上げるカルテルを結んだとして、公正取引委員会が10月3日、うち5社に課徴金納付命令を発出しました。ちなみに、6社のうち1社はリーニエンシー制度に基づき命令の対象から外されています。

この配送料は、配送業者に支払う費用の一部を百貨店が負担する顧客サービスですが、配送業者の社員の労働時間・処遇の改善を受け、補充採用等で総人件費が増額し、配送料の値上げが続いています。そうしたなかで、価格・品質以外の過剰競争を避ける目的でカルテルが行われたようです。

ビジネスの非本質的な部分でエネルギーを費やしたくない責任者の気持ちもわかります。でも、価格・品質以外の顧客サービスでも、市場競争を阻害する協調行為があれば、カルテルとして取締りや制裁の対象となることは従来から明らかです。

また、最終顧客から回収できる金額を統一しても、各百貨店の負担を均等にしなければ意味がありませんので、配送業者との料金決定においても影響が働いたのではないかと推測されます。そうだとすれば、本件カルテルは、配送業者の得べかりし利益の一部を奪った可能性もあり、その損害の回復という問題も生じかねません。

原価の高騰局面では、各百貨店の責任者には、カルテル以外に手段はなかったのでしょうか。機密保持等のかたい話を考えなければ、配送業者経由で他社の動向を把握し、近い金額で独自に設定する方法もあるかもしれません。でも、コンサルタントしてお勧めできる方法ではありませんね。難しいな。

 

 

 

冨田秀実著『ESG投資時代の持続可能な調達』のお薦め

久しぶりに素晴らしい書籍に出会いました。冨田秀実著『ESG投資時代の持続可能な調達』(日経BP社)をお薦めします。

著者の冨田氏はCSR業界では著名なインフルエンサーで、ソニー㈱でグリーン調達、CSR推進等の実務を牽引されたのち、コンサルタントとしてご活躍の方です。政府委員、ISO26000、東京オリンピック・パラリンピックの持続可能な調達委員会WG委員など重職を歴任され、サステナビリティの国際動向を踏まえながら企業実務の進め方を解説する技量には高い評価が集まっています。

同著は、日経BP社の専門誌『日経ESG』に連載中の「待ったなし『持続可能な調達』」を大幅に加筆・再編集したもので、単元がコンパクトで文章も平易です。しかし、その内容たるや、CSRの歴史的変遷、象徴的な出来事や事件、OECDのデューデリジェンス・ガイダンスの解説など、現時点での理解に必要な情報を鮮やかに料理されていて、CSRの書籍数冊分の知識が得られます。

CSR調達だけでは全体像が分からないと考える必要はありません。CSRは詰まるところ責任の範囲とレベルの拡大ですから、調達先にもこれだけの配慮をする、ましてや自社はその上を目指すと考えれば、正確な理解にたどり着きます。そうした意味では、CSR調達には論点が凝縮しており、これを窓口に全体を紹介する冨田氏の着想と手腕に敬意を表します。

この一冊を頭に入れておけば、CSRの専門家と対等に話ができますし、メディアを賑わす情報も容易に理解できることでしょう。10月2日発行ですので、大きな書店であれば平積みされています。台風上陸の三連休に、是非ご一読をお勧めします。

下請法違反の確約計画制度の導入

9月27日付の日本経済新聞に、公正取引委員会が下請法違反事案に関して確約計画制度を導入する旨の報道がありました。

確約計画制度とは、独禁法違反の疑いがある場合、公取委の問題指摘を受けて60日以内に、違反状況を一定期間内に是正する行動計画を提出し、計画内容が適正であれば公取委が調査を修了し、排除措置命令や課徴金まで踏み込まない仕組みで、TPP加盟国には導入が義務付けられています。

現状は調査から排除措置命令まで1年以上の期間を要し、処分が出たときには是正も完了しているのが一般的です。それよりも、嫌疑の段階で公取委から指摘があれば、企業の経営者が事態の重大さを理解し、自主的に改善をはかる動きに持っていけます。

事前に行動を起こして大事になるのを回避できれば、経営者の自信や確信につながり、以後のコンプライアンス経営に弾みも付きます。

アマゾンジャパンの調査も同社の自主的改善によって調査が打ち切られました。企業の対応としても監督行政の役割としても、それが正しい姿ではないでしょうか。私は確約計画制度の導入に賛成です。