不正行為等の発見統制に関する研修セミナーのご案内

私が理事・運営委員を務めます日本CSR普及協会で1月29日(月)に不正行為等の発見統制に関する研修セミナーを開催します。

研修セミナーでは、三線ディフェンスによる発見統制の概要を弁護士の竹内朗氏が解説した後、不正事例に基づいて、すでに起きている不正をどのように発見するか、内部監査専門家、弁護士、公認会計士の御三方にパネル方式でお話していただきます。

会員以外の皆様も参加(有料)できますので、是非お申し込みください。http://www.jcsr.jp/seminar.php

不正行為等の発見と言いますと、内部通報チャネルの拡充を提唱する方がいますが、これはあくまでもサブラインに過ぎず、職制を通じた報告・相談や三線ディフェンスの体制整備といった本来の形が重要です。

なお、三線ディフェンスは初耳といった方がいるかもしれませんので補足しておきます。
・ 第一のディフェンスラインは、業務執行部門がリスクオーナーとして統制手続に基づき運用することをいいます。
・ 第二のディフェンスラインは、リスク管理部門やコンプライアンス部門が業務執行部門から独立した立場で監視とアドバイスを提供することをいいます。
・ 第三のディフェンスラインは、内部監査部門が内部統制システムやリスク管理機能について合理的な保証を取締役会に与えることをいいます。

今回の研修セミナーでは、こうした地に足の着いた基本の徹底を説明させていただきます。ご期待ください。

 

取締役の多様化

議決権行使助言会社が公表する方針の中で、社外取締役や女性取締役の増強など「取締役の多様化」を求める考えが最近示されています。

例えば、社外取締役を取締役総数の1/3以上とする案があります。社外メンバーがこの規模になりますと、取締役会の役割・上程事項、議長・議事運営などを抜本的に変えませんと社外取締役の存在価値が発揮できません。

鶏が先か卵が先かの議論になりますが、土俵を変える準備にめどをつけてからそれに相応しい社外取締役を探すのが順序だと思います。このプロセスの不足から、ご意見頂戴の活用にとどまり、せっかくの社外取締役が宝の持ち腐れになっているケースが少なくないように感じます。

また、経営の大きな方向性を決めるのが取締役会の基本的役割であることに異存はありませんが、当期業績を追い掛け、任期中の無失策に拘泥する業務執行陣に、客観性と説得力のある中長期の予測と計画を期待するのは、なかなか難しいと思われます。

仮に社外取締役が指摘・要求しても業務執行陣の当事者能力に難があれば実現できませんし、後日の選任議案に反対するのでは時機を逸します。経営経験のある社外取締役が指南役を務めれば、業務執行を担当することになり、社外性と抵触する懸念もあります。

企業のガバナンス実務で、「経営の大きな方向性を決める取締役会」が実現しないのは、こうした事情があるからだと私は考えています。

一方、女性取締役の積極的な登用は、働き方改革や性差の撤廃を進める期間は、意図的に下駄をはかせても導入すべきだろうと思います。事業内容や業態によって必要性の濃淡はあると思いますが、男性ビジネスマン以外のステークホルダーの代弁者として、期待役割は非常に大きいでしょう。

社外取締役にしろ女性取締役にしろ、取締役を多様化し、異なる経験や価値観から光を当て、他人の意見に本気で耳を傾ける重要性を、取締役全員が共有できることが前提となります。自分では多少の自信があっても、大事のことは専門家や先輩に広く意見を聞くことが大切ですし、他人の話を聴く姿勢があれば周囲から信頼され、自分の見聞も広がります。取締役を多様化の成否は、役員の度量にかかっているように思います。

贈賄防止アセスメントツールの意義

1月8日付けの日本経済新聞で「贈賄防止アセスメントツール」の作成・公表予定が紹介されていました。グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(東京・港区)の活動のひとつで、38の質問に回答すると企業の予防策の充実度合いが評価できる建て付けになっているようです。機関投資家と投資先企業との間の贈賄防止強化に向けたエンゲージメント・ 対話を促進し、かつ企業の透明性と持続可能性を高めるツールとして有効だと思います。

外国公務員に対する贈賄は、国際規模で取締りが強化され、厳罰化も進んでいます。数百億円や一千億を超えるぺナルティ/和解金も発生していますし、投資家からの懸念表明も強くなっています。日本企業では、大手企業は何らかの予防策を講じているものの、それ以下の規模になりますと、対応していない企業が少なくありません。

実務では、発注会社のCSR 調達への組み込みが不可欠ですし、エージェントや協力会社を迂回しての不正も懸念され、現地拠点の縛り付けに工夫が必要となります。予防策を講じる際には、このあたりのリスクにどこまで踏み込んで牽制をかけるか、悩むのが常です。

投資家からの説明要求が強化されるほど、企業は予防対策の本気度を示さなればなりません。同記事で紹介されている三菱商事のESGデータブックなどは、他社も参考すべき好事例だと思います。

こうした予防対策は、自動車の車検のようなものですから、公道を走りたいのなら、それなりのものを用意すべきでしょう。100%は撲滅できないからと言って対策を怠る選択肢はありません。

グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンの活動成果が日本企業に普及することを期待します。また、このツール作成を牽引している弁護士の高橋大祐氏は、グローバルコンプライアンスやESGの分野で法律・規則を実務に結びつける有意義な活動を展開する才気あふれる人材です。氏のWeb サイトも参考になりますので紹介させていただきます。https://www.dtakahashi.com/