行方を失った資源ごみ

欧米日の先進国で排出される廃プラスチックや古紙などの資源ゴミは、かなり割合で、中国をはじめとする新興国や発展途上国に輸出されてリサイクル処理される国際規模のシステムが作られています。

しかし、国内の廃棄物で代替可能な資源ごみの輸入を段階的に縮小する方針を中国が2017年に打ち出して以来、タイ、マレーシア、ベトナム等の東南アジアが中国に代わって、資源ごみリサイクルの引き受け役を担ってきました。

しかし、東南アジアのそうした国々でも、資源ごみの荷受け、保管、リサイクルで不適切な事例が急増し、社会問題になっているといった環境団体の問題提起が増えています。いま、日本の中間処理事業者では、行き場を失った資源ごみがあふれていると聞きます。

資源リサイクルは、粉砕、選別、洗浄、資源化などの工程があり、労働集約的な仕事といえます。今後、各国の経済力や生活水準が向上するにつれて、労働力の確保や環境影響の回避要求が強まることでしょう。

日本は今後、資源リサイクルを委託する事業者における工程の自動化や環境対策にも積極的に関与して、安定的な受け入れを確保する必要があるでしょう。それと、SDGsにも盛り込まれ、海洋ごみを中心に欧州で進んでいるプラスチック利用の削減という国際的な流れを考慮しないわけにはいきません。

日本企業は、プラスチックの消耗品・容器・包材について、作るを減らし、リサイクルを自動化・効率化する方向性を強く意識するタイミングが早晩訪れると考えた方が良いと思います。

清水建設による枯葉剤汚染土壌洗浄事業

7月7日付の日本経済新聞に、ベトナム戦争の枯れ葉剤で汚染された土壌洗浄プラントを清水建設がホーチミン市近郊に建設し、2019年1月から3カ月半の実証実験で効果を確認し、全国の汚染土壌に対象を広げる計画であるとの記事が掲載されていました。

同社の洗浄技術は、汚染土壌を分級(篩い分け)し、粒子の大きさに合わせて水洗いや擦り洗い、泡表面に汚染物質を付着させて除去するフローテーションなどを行う独自の洗浄プロセスで、低コストで排水、排気ガスの心配もなく、一般的な熱処理より導入負担が軽くて済みます。

同社は2014年4月、当社技術について枯葉剤由来のダイオキシン汚染土壌への適用性に関する調査に着手し、15年5月からは、ベトナム国内で簡易実験による洗浄可能性調査を実施しました。15年11月には、国際シンポジウムにおいて当社洗浄技術を発表し、国の資源環境省、科学技術省、国防省から高い評価を得て、同国の枯葉剤汚染土壌の本格的な洗浄可能性調査の依頼を受けました。

そして、ビエンホア地区で回収した汚染土壌を日本国内に持ち帰り、16年2月から土壌洗浄実験を進めてきた結果、同国の汚染土壌の大半を占めるとみられる汚染レベル20,000pg-TEQ /gの汚染土壌については、ダイオキシンの除去率が95%となり、洗浄した土壌のうち7割程度を再利用可能な1,000pg-TEQ /g未満の浄化土に再生できることが確認されました。

今回の記事は、4年越しの検証と準備がいよいよ実用段階に移行する旨の報道です。この清水建設の枯葉剤汚染土壌洗浄計画は2016年の公表時から注目していました。ベトナムの経済発展の障害となる枯れ葉剤汚染土壌に自社の浄化技術を適用し、同国政府と連携を図りながら、当地の社会課題をビジネスで解消する典型的なCSRケースといえます。このケースの優れている点は、有害な土壌を生活利用や農業生産が可能な用地に転換し、貧困層等の生活の向上に資することにあります。

CSRケースでは、工場の虫除けの網戸として使われていた技術を応用し、ポリエチレンに防虫剤を練りこみ、薬剤を徐々に表面に染み出させる技術によって、マラリアに苦しむ人々に役立つ防虫剤処理蚊帳を商品化した住友化学が有名ですが、いずれも人々の生命・健康や途上国の経済発展に貢献しながら、ビジネスとして持続可能な成長が期待できる点が評価されています。

SDGsに関心を払う日本企業は、こうした自社の技術・ノウハウを困っている国や地域の環境課題・社会課題に適用することで用途開発を考えてみてください。CSRの社内研修でグループ課題とする方法など、いろいろ試してみると良いと思います。

 

日産自動車の排ガス・燃費検査データの改ざん

7月9日の夕方、日産自動車が緊急記者会見を開き、車の排ガスや燃費の検査データを改ざんしていた事実を公表しました。

同社の説明によると、追浜や栃木など国内の複数の工場で、新車を出荷する前に無作為に選んで排ガスや燃費の検査をする工程で、社内の基準に満たない結果が出ても、基準に合う都合の良い数字に書き換えたり、国が定めた基準とは異なる条件で検査を行っていたりしたようです。

検査した車の半数を超える車で不正があったとの説明に正直なところ驚きました。この比率は「不正」の範囲を超えており、販売店や購入者に対する構造的な欺罔行為と言われても仕方ありません。また、こうした不正は少なくとも2013年ごろには行われていたとのことですが、着手時期がどこまでさかのぼるか、今後の詳細調査の結果を確認しないとわかりません。

今回の説明を聞いて、同じ業界のある企業で発覚した不祥事は他の企業でも隠れている可能性が高い、というセオリーを改めて痛感しました。三菱自動車の燃費偽装、フォルクスワーゲンの排ガス偽装が大問題になったとき、日産自動車はどこまで自分事として現場の実態把握に努めたのでしょうか。通り一遍の質問書と回答で調査完了としたのではないでしょうか。

現場の実態を把握する際は、現場の責任は問わない、会社内の膿を出し切る、といった組織トップの強い指示のもと、調査部門の人間が現場部門に何度も足を運び、現場責任者や担当者に対して、同じ目線で擁護するように聴き取る必要があります。ふつうに質問したらリスク情報は得られません。現場を守れずに何の経営かと思います。