T衆議院議員のパワハラ報道を考える

T衆議院議員の絶叫、いじめ、暴力行為に関する報道がマスコミや週刊誌を賑わせました。T議員が人間の尊厳を理解し、ご自身の気持ちの表現方法を改め、そのうえで迷惑をかけた方々に対する責任を取るのが筋だと思います。ご本人が議員を辞め、世間が忘れてあげるのが最善の解決でしょう。釈明会見やプライバシーをえぐる報道は害多く益少なしです。

パワハラには、直接の被害者のダメージだけでなく、業務の妨害、退職者の増加、組織のイメージダウンといった組織への加害性があります。T議員の件でも、他の国会議員が「自分たちも同じように思われたくない」との発言をしているようですね。組織や事業を守る経営の重要行動ですので、肝心のトップがパワハラしてしまうのは組織の破壊行為で、その罪の重さは甚大です。

民間企業でパワハラする経営層や幹部には、そうした言動を浴びて育った方、強い劣等感を隠したい方、とにかく感情をコントロールできない方など、様々な背景があります。そうした経営層や幹部に私は、自他尊重のコミュニケーション、職位を脱いで相手目線で話を聴く、自分の成功体験を押し付けない、といったあたりから話をします。

T衆議院議員の報道は、スーパーエリートへの嫉み、あまりに漫画的な言動の安易な多用など、見ていて気持ちの良いものではありません。他人の人権を尊重しない社会、はき違えた選民思想・優生思想など底辺にある問題意識を指摘して、軌道修正する機会として欲しいものです。それこそが社会のリーダーやメディアに国民が求める対応ではないでしょうか。

非常時に安全側に制御する信頼性設計

6月6日(火)、茨城県大洗町にある日本原子力研究開発機構大洗研究開発センター燃料研究棟で、核燃料物質の点検作業中に、保管していた容器を開封したところ核燃料物質を入れていたビニールバッグが破裂し、作業していた5名の身体汚染、そのうち4名が内部被ばくする事故が発生しました。

7月5日(水)に開催された原子力規制委員会の定期会合の配布資料(公表)では、現時点での調査結果として、次の問題点を指摘しています。

1.  長期間経過している危険物質を開封する作業は非定常作業(日常的に反復・継続して行われることが少ないため作業者が習熟する機会が少ない作業)と認識して作業計画書を作る必要があったが、これを策定していなかった。
 2.  放射線分解によるガス発生に関する十分な知識がないためにビニールバッグの破裂を予見できず、一般安全チェックリストの点検項目においても爆発、破裂、飛散のおそれがないと評価していた。
 3.   放射線安全チェックリストの被ばく線量(計画値)において、取り扱う核燃料物質に係るチェック項目がなく、使用する場所の事前サーベイのみに基づいて被ばく線量を評価しているなど、取り扱う予定の核燃料物質に係る検討が欠けていた。
 4.  施設の保安活動を行う者に対して放射性物質放出の際に執るべき措置の教育・訓練は行われているものの、汚染又は被ばくした時の対処の教育訓練等は行われていなかった。

原子力関連施設は、膨大な保安規定やマニュアル、徹底した分業体制と自動システムという特殊性があり、一般の事業組織とは異なる背景・要因があるとは思います。しかし、横浜マンションの杭打ちデータ偽装事件の調査報告書でも指摘している通り、予定外のトラブルが発生したときの対応ルールの未整備・不徹底は多くの組織に共通した弱点といえます。

トラブルの際に、焦りから事態を悪化させる人間の行動は広く知られています。定期的な教育・訓練や注意喚起は必要ですが、すぐに忘れてしまいます。事故やミスは必ず起きる前提に立ち、人為的誤差が介入しないように自動化・無人化を進め、かつ障害が発生しても安全側に制御する信頼性設計(フェールセーフ)に投資することが、危険施設を保有する事業者の責任であると社会は考えるようになりました。経営による設備投資の決定では、こうしたミスや不正を防止する観点も考えたいものです。

部下に一杯飲ませる効用

昔の役員・幹部は、呼び出して一杯飲ませる、忙しくても部下の親族の葬儀に顔を出すといった、部下の心を掌握する術にたけていました。部下は、雲の上の人に認められた、褒められた、心配してくれたと感激します。意気に感じて、この上司に義理を欠いてはいけない、問題があれば耳に入れようとなるわけです。店や金額の問題ではありません。

「悪いニュースは最初に早くに」と説示する役員・幹部は少なくありません。でも、仕事の会話しかない課長や担当者が、どうして役員・幹部の懐に飛び込んでくれるでしょうか。現場からリスク情報が上がってくる組織は、部下の将来を考え、声掛けを怠らない役員・幹部への神様からのご褒美のような気がします。

どうしてこんな話を書いたかと言いますと、経営によるリスク情報の把握が内部通報窓口など制度偏重の議論に走りすぎていますし、パワハラの申告を恐れた役員・幹部が感情を発露した率直な会話を避ける傾向が増加していると感じるからです。ここを間違えると、組織の建前と本音の矛盾に現場が苦しんだり、あきめたりすることになりかねません。

部下の努力を認め、改善策を教え、励まし続ける。部下の提案に、「よし、わかった、やってみろ。責任は私が取る」と応える。役員・幹部がそうした姿勢を一貫して保つのが、「風通しの良い組織」なのだと思います。最近、役員・幹部の方々と話をしていますと、中間管理職のような技術的・細目的な内容が多く、とても心配です。