東芝・内部統制監査の不適正意見への疑問

東芝が8月10日、関東財務局に提出した2017年3月期の有価証券報告書に関して、PwCあらた監査法人は17年3月期の財務諸表について「限定付き適正意見」を、内部統制に関する監査には「不適正」をそれぞれ表明しました。

PwCあらた監査法人は、東芝が16年度に計上した米原発工事に関する損失約6,500円について「相当程度ないしすべての金額は前年度に計上されるべきであった」と評価しています。公表資料を読んでも、事実認定の問題なのか会計事実の評価の問題なのか、いまひとつはっきりしませんが、「想定内の決着」というのが率直な感想です。

一方、内部統制評価の不適正意見については考えさせられるところが多々あります。重大な会計不祥事が判明した企業では、その後の内部統制評価で意見不表明もしくは不適正意見を受けるのが通例ですが、「あの人は悪いことをしたから人間の中身も悪いに違いない」といった考えと同じく、後付け判断のような気がしてなりません。

そもそも、経営トップが暴走しても部下の従業員が100%ストップをかけられる企業、監査法人による忖度を辞退する企業などあるのでしょうか。私も内部統制システム構築のコンサル業務を担当しますが、運用段階に移行しますと、業績の推移、トップの意向、組織長のタイプなどによっては、なんとでも甘く流れるのが現場の実態です。

内部統制は永遠の未完成です。それを監査して適正意見を書くのは、なにを基準とするのか、監査法人の皆様に質問しても明解な回答をいただいたことはありません。内部統制評価制度のオリジナルである米国のSOX法は「財務報告の正確性の裏付け」として導入された訳ですから、それに沿って考えれば、財務諸表は「限定付き適正意見」、内部統制監査は「不適正」という二股膏薬の結論に疑問を禁じえません。

また、東証は15年9月に東芝を特注銘柄にしていましたが、東証の上場廃止基準も「内部管理体制について改善がなかったと取引所が認める場合」と曖昧ですので、PwCあらた監査法人の「不適正」という評価がどのように影響するか、今後の推移を関心をもって見守る必要があります。

本件は、内部統制評価制度の限界と混乱があらわれた事象だと思います。制度の見直しのきっかけになることを切望します。