女性の新入社員が求めるロールモデル

昨年までに非常勤講師を務めていた女子大の教え子から相談を受けました。本人は会社から新人女子社員のメンター役に任命され、恩送りのつもりで後輩をサポートしようと張り切っていたところ、新人女子社員から「先輩は私が目指すロールモデルとは違う」と言われ、どうしてよいかわからない、というのです。(ちなみに教え子たちは私をお父さんのようだと慕ってくれ、教員冥利に尽きます)

教え子の後輩が希望するのは、仕事、結婚、出産・育児を完璧にこなすスーパー女性社員で、昇格したものの結婚の予定もない自分には荷が重い、メンター役を返上すべきか、という相談内容でした。私は、「そんなスーパー女性社員はいないよ。自分の優先順位を考えて何かを後回しにしないと道は開かない」「仕事の創意工夫と職場の人間関係が自分を成長させて可能性を広げる。与えられた職場と仕事を天命と考えて、依頼者の要求を理解し、チームに貢献することだけを考えさせなさい」と後輩への指導内容を助言しました。

女性の新入社員は、能力不足や私生活の充実を理由に、入社直後に管理職への挑戦をあきらめる傾向があると企業の採用担当者からよく聞きます。女性の管理職は、独身や出産経験なしの方が多いという統計もあります。その背景には、政府の音頭で「女性活躍」を標ぼうしたものの、男性役職員の意識改革を断行せず、女性社員に男社会への順応・同化を求めたり、無意識のうちに補助的役割に押し込めたりする企業が多い現実があります。

そうした状況にありながら、業務経験や組織経験がない段階からキャリアプランを考えさせることこそが、仕事一本の設計で済む男社会の発想、ご都合主義ではないでしょうか。女性のライフステージは不確実性の多様さが特徴なので、キャリアプランにこだわらず、むしろ多数の選択肢を提供して柔軟に活用してもらうことが、女性社員の継続就業につながると私は思います。

私は社会人大学院の講義で、90年代以降のオランダのコンビネーション・シナリオ(1.5所得モデル)を紹介しています。オランダ国民は育児などの家族役割を重視するので、フルタイムで働く共稼ぎはあまり支持されません。所得も2.0ではなく1.5に増えればよい、残った0.5を家族、自己啓発、地域活動に使いたいという生活優先志向が強くあります。そこで、オランダ政府は、パートタイム労働を働き方のベースにおいて、夫婦で1.5人分働き、仕事と家庭責任を分担する基本モデルを提唱してきました。

これは、労働と家事分担における男女共同参画社会を目指す政策です。安倍政権の女性の活躍推進や働き方改革も、このオランダモデルを下敷きにしていると思われますが、目指す方向性を「生活優先志向」に振りきらないことから、真の狙いがわかりにくくなっていると私は感じます。家庭より仕事が好きな男性がものごとを決める限界が、こうした点にも現れているのではないでしょうか。