テイク・リスクの精神と素早い意思決定

6月12日付け日本経済新聞のコラム「一目均衡」で編集委員の西條郁夫氏が、東芝のメモリ事業売却は半導体企業の栄枯盛衰の潮流から必然とも考えられるとの意見を述べられています。

西條氏のご意見は次の要旨で構成されています。
① 技術革新のスピードが速く、相場変動が大きい半導体ビジネスを制するには、テイク・リスクの精神と素早い意思決定が不可欠で、総合電機企業体の一部門として経営するには手に余る性格を有している
② 上位10社からNEC、モトローラ、フィリップスの名前が消え、インテル、クアルコム、エヌビディア等の専業会社の名前が並ぶ事実は、そうした推測を裏続けている。唯一、総合電機企業体のサムソン電子の名前があるのは、創業家出身の絶対的なリーダーの存在があるからにほかならない。
③ 東芝メモリの成否は、主導権を握るペインが投資回収や目先の業績底上げに拘泥せず、必要な投資をしっかり行うことにある。

私が西條氏のご意見から感じたのは、半導体ビジネスに限らず、サラリーマン社長、モニタリングモデルの取締役会、社外取締役の牽制力強化など、現在のガバナンス論を表面的に適用すると、何事も教科書的な予定調和に落ち着いてしまい、テイク・リスクの精神と素早い意思決定が後退してしまうのではないかという心配です。

企業を成長に導く重要判断で、ときに非合理な部分や不透明な部分があるものの、それを超えるメリットを追い掛けるためにあえて目をつむるケースもあります。日頃から経営情報にふれていない社外取締役がそうした場合に過剰反応すると、得られる果実を失うかもしれません。

私も上場会社の社外取締役を6年間勤めましたので、ガバナンスの必要は疑う余地はありません。そのなかで、アクセルとブレーキのバランスは非常に神経を払うところであるものの、個人の判断によるところが大きいのが実態です。

「適正なテイク・リスク」と言葉では簡単ですが、チェック&バランスのベストプラクティスなど実践ノウハウを広く共有して、日本企業の社外取締役をレベルアップすることが期待されます。

(追補) 6月18日付け日本経済新聞の記事によりますと、東証1部上場のサイボウズ社は、社外取締役を設置しておらず、「事業環境への理解が不足した社外取締役を置くことによって意思決定の迅速さが阻害される恐れがある」とコーポレートガバナンス・コードに従わない理由を開示資料で明示しているようです。こうした考え方があって当然だと思います。