組織トップのノブレスオブリージュ

安倍政権が、衆院予算委員会などの国会質疑で議席数に応じた質問時間配分の方針を打ち出して、野党の反発を受けています。

現在の質問時間配分は、民主党政権下の野党自民党が時間を増やすように求めた動きを反映したものですし、カジノ法案を審議する昨年の衆院内閣委員会では、時間が余ったとして質問に立った自民党議員が般若心経を唱え、世間から批判を浴びました。どうも終始一貫しない印象を受けます。

野党の迷走・分裂、立憲民主党の躍進は、二大政党制でない我が国での小選挙区制の副作用、中選挙区制に復帰する必要性に気付いた国民の声のように私は思います。その衆院選の圧勝直後での、言論封殺とも映りかねない戦術に、政権与党の責任に逆行するとして反発が集まるも無理がありません。

権力を持つ者に求められる立ち振る舞いは、企業の経営トップにも通じます。ノブレスオブリージュ(noblesse oblige: 高貴なる者に伴う義務)という言葉がありますが、特権的な地位には相応の義務が伴います。経営トップにもっとも求められるのは、透明性を確保し、批判・提言を率直に受け止め、受託者として説明責任を果たすことにあります。それには無私の覚悟が必要です。

組織のトップが内外の批判を封じ、権力の安定をはかったとき、裸の王様となり、その組織は衰退・破滅の道に歩み出します。トップの度量のなさを感じたとき、構成員は戦意を喪失し、優秀な人材は去り、主権者は信任を取り下げます。組織トップに求められる最大の要件は、構成員や主権者からの「人望」だと私は思います。

例えば、企業で重大な不祥事が発生したとき、公表の直前に社員に説明するよう、私は対策本部に提案します。また、「どうすればよいか」と質問する組織トップには「言葉や態度の端々ににじみ出るほど、心の底から悪かったと思ってください」とアドバイスします。率直にミスを認め、対応への協力を求める組織トップの姿に、心ある社員が自発的に信頼回復の行動に動いてくれますし、会社全体で改めようとする空気がメディアや関係先にも伝わります。

本当に社会の将来を考えているのか、自分の利益を優先しているのか、世間は敏感に感じ取ります。陳腐な言い訳をしたり、自分の非を棚に上げて他人を批判したりするなど、世間を甘く見た態度を取ると、これまでの味方も敵に転じます。

組織のトップは、ステークホルダーの利益を最優先に考え、権力に長居せず、後進を育て、事が起これば責任を取って、ガバナンスやコンプライアンスの手本を示していただきたいと思います。