経営の議論において「働き方改革」をどのように位置づけるか その2

昨日の続きを書きます。

働き方改革の究極の狙いが、政府の説明通り、グローバル競争に伍する労働生産性の確保にあるならば、従業員を原則として定時に退社させ、有給休暇を100%消化させ、魅力ある報酬・処遇を提供しながら、売上・利益を1.5倍にする経営戦略を考える必要があります。

第一段階でなすべきことは、次のようなことでしょう。
① 一人ひとりの従業員の割当業務(アサインメント)を絞り、優先順位も明確にする
② 当日に必ず完了する業務をいくつかに絞り、集中して作業できる環境を提供する
③ 緊急事態以外は定時で退社させ、未完了業務は翌日以降にまわす
④ 業務や就労の特例幅は上級マネジメントが厳格に審査・許可する
⑤ 定時内に業務を消化できるよう、業務削減、ムダ取り、段取り、突発指示の禁止を進める

職場のムダの多くは、役員・上司が過剰な報告・資料作成を要求する、部下が忖度して勝手に仕事を作る、必要情報の所在や鮮度が不明で確認に時間を要する、実績残しのために意味のない点検・報告作業を増やす、仕事をしているふりをしてサボる等々の要因が考えられます。

これらに対策を打つことで残業の半分以上は削減できるのではないでしょうか。少し頑張って続ければ、今日中にやらなければならない仕事などそれほどないことに全員で気付くことでしょう。お客様が怒ってしまうときは、職場やチームで協力して残業すればよいだけのことです。特命プロジェクトにでも従事していない限り、多くの職場はそんなものだと思います。

問題は、いよいよ経営戦略に踏み込む第二段階です。従来の内部昇格、(a)家族的経営と決別し、(b)多様な能力・条件の労働力を、(c)システマティックに標準化・自動化した業務設計に乗せて、(d)強いマネジメントで臨機応変にコントロールする経営、こうした理想像にどうやって近づくかが問われることになります。

その際の経営判断で大切なのは、次の考え方をしっかり守ることだと思います。
① マネジメントと労働を明確に区別した就業条件・報酬・評価基準とする
② 競争意識の強い男性の特質、人間関係のメンテナンスが得意な女性の特質を理解し、両者のバランスがとれた組織風土、男女構成を考える
③ マネジメントの能力で利益を稼ぐ発想に立つ、内部昇格の割合を半分以下に抑え優秀なマネジメント人材を採用して権限・責任・高報酬を与える
④ 労働力のキャパシティの範囲で事業計画を考える、昇給昇格を動機づけにただ働きをさせない
⑤ 幸せな家庭、充実した私生活の資金を確保するため従業員は働いている、割当業務を完了したら直ちに解放される権利をもっている
⑥ 残業や兼業が不要な報酬水準を維持する、これまで生活給化した恒常的な残業があれば本給に組み込むか、一定時間分の残業分として固定金額で支給する(時間を超えた残業代は追加支払い義務があります)

中国やアジア新興国でも、上級マネジメント層の報酬は日本企業の支給水準を超えています(8月27日付け日経朝刊)。日本でも、年収1,000万円を超える管理職や専門技術者の求人が増えているとの新聞報道(10月13日付け日経夕刊)もありました。一般社員の雇用においても、いきつくところは「正社員」の消滅で、自分の希望や条件が明確な労働力を組み合わせて働いてもらう時代に突入しています。

この記事を書いている最中、ト車では、勤続10年以上の事務職や技術職の係長クラス約7800人を対象に、残業時間に関係なく月17万円の手当(平均45時間超の残業代に相当)を一律支給した上で実際の残業時間が一律の手当分を超えた場合には残業代を追加支給する、過重労働を防止する目的で、平日5連休を含む年間20日の休暇取得も義務付ける等の新人事制度を12月から導入する旨の報道がありました。

働き方改革は経営戦略の抜本的に見直しにほかなりません。これに気付いた企業が、持続可能な成長を手に入れることでしょう。