銀行の統合と結合規制審査

12月15日、公正取引委員会は、新潟県に本店を置く第四銀行と北越銀行の統合を承認することを発表しました。一方、長崎県の親和銀行を傘下に持つふくおかフィナンシャルグループと長崎県最大の十八銀行の統合の審査については、審査中ではあるものの、「顧客に不利益な統合は認めない」という考えを公取委が表明し、両行の統合計画も座礁しかかっています。私も独禁法分野の専門家に詳細を教わっている段階ですが、ポイントを書かせてもらいます。

 ご存知の通り、公正取引委員会は、株式取得等(株式の取得、合併、共同新設分割、吸収分割、共同株式移転及び事業等の譲受け)の企業結合計画について、独占禁止法第10条各号に基づく事前届出制を採っており、企業結合計画が「一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるか否か」についての審査を行っています。

審査の基準や進め方については、「企業結合審査の手続に関する対応方針」が平成23年7月1日から適用されています。基本的には、届出前相談(任意)、一次審査、二次審査の流れで構成され、「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」おそれがある場合、公取委が受け入れられる問題解消措置を提示しなければ排除措置命令(統合計画の不承認)が発出されます。

第四銀行と北越銀行の統合計画については、県内企業に対するアンケート調査等を踏まえ、企業向け融資に対する影響が厳密に検証され、「県内外に競合行が存在し、他行からも借り換えが可能」との理由から、計画が承認されました。これに対して、ふくおかフィナンシャルグループと十八銀行との統合計画は、長崎県の市場を事実上独占してしまう可能性があるため、審査が長期化しているようです。

金融庁が「健全な金融仲介機能を生き残らせるために地銀の経営統合は必要」と立場を鮮明にする一方、公取委は「事実上の市場独占を容認するのは適当ではなく、既存の対応方針に基づいて、利用者が十分な選択肢を確保できるかどうかを中心に審査を進める」との考えを説明しています。もちろん経営の持続が困難な事情は考慮されますが、それだけで承認されるわけでなく、判断要素のひとつに位置付けられるそうです。

日本経済の成長期の産業政策は、効率的な競争環境の維持(独占の禁止)を自明の理としてきましたが、人口減少や金融機能の変容が進む今後の社会では、生き残りが優先課題となり、企業結合が手段として用いられる結果として、消去法的な意味での市場独占を生みやすい構造になります。私が法律を勉強した時代には、国内市場での市場独占はほぼ講学上の問題と考えられていましたが、社会構造や事業の態様が変化すると法適用の在り方も変わることを実感します。

そういえば、外国でのカルテルに日本の独禁法を適用する域外適用を肯定する最高裁判決が12月12日にありましたね。国際的な規制のハーモナイゼーションが背景にあるとは思いますが、域外適用を「される国」から「する国」になったのかと思うと、時代の変化を感じます。

今回の企業結合の問題ですが、企業経営は目先の利益のため顧客の利益を犠牲にすることがありますので、自由経済市場を維持する以上、競争環境の維持(独占の禁止)を後退させないことが重要と考えます。私は、顧客が他行から借り入れられる可能性を重視する公取委の方針を支持します。