自己否定の意見を許容できる組織

商工中央金庫は10月25日、不正融資問題の調査結果を公表し、経済産業省、財務省、金融庁は二度目の改善命令を発出しました。ご承知の通り、ここでの不正は、「危機対応融資」の条件に適合させれるため、融資先企業の業績を悪く見せる偽装を申請書類に加工するという、珍しい形態です。調査結果では、「経営陣が融資のニーズが減っている時期にも営業店に過度なプレッシャーをかけた」ことが根本原因であるとしています。

リーマンショックを契機に創設された「危機対応融資」は、東日本大震災の復旧・復興にも活用され、商工中央金庫の中心事業になりました。そして、危機が去った後も、この事業を組織の社会的役割と位置付け、予算を確保して組織の延命を図る背景のもとに、支店ごとに危機対応融資の年間目標が割り当てられ、担当者も数字の達成に追い立てられた旨が第三者委員会報告書には書かれています。

実体が乏しいのに組織の命題や目標を否定できず、規則違反や偽装工作に現場を追いやる構造は、民間企業の不祥事にも共通しています。組織トップは数年間うちに改善したいと思っていたとしても、トップの意向を忖度して保身を図る幹部クラスが有無を言わせない空気を作り、現状否定を排除し、従来通りの業務遂行を指示します。

現場の中間管理職や担当者は、「実現性がない」、「損失を拡大する」、「舵を切るべき」等々感じていても、これらを口にすると、能力不足、協調性なし、邪魔者等々のレッテルを張られるので、本音を隠して同調します。本来であれば、客観的な事実に基づいて分析・判断すべきところですが、自己否定の意見を許容できない組織では、正気ではない指示・命令が跋扈し、組織ぐるみの不正行為に発展します。

自由闊達な雰囲気ながら規律の取れている組織があります。そうした組織では、トッフの層が中堅・若手の意見を嬉しそうに丁寧に聴き取り、「よし」と思ったら権限とリソースを与えて任せます。成功すればさらに引き立てますし、失敗すれば結果の責任を厳しく問います。

自己否定の意見を許容できる組織、聴く耳をもつトップ、提案・実行・責任の共通認識が、安定した事業運営の大きな条件なのだろうと私は思います。