職場のコミュニケーション改善に関する誤解

最近、職場のコミュニケーション改善に関する相談が増えてきました。少し気になるのは、言葉の選択や話し方を教えれば状況が良くなると安易に考えている方が少なくない点です。

コミュニケーションは、相手と自分の理解、価値観、表現の違いを正確に理解し、相手と自分を対等・同価値において、必要があればギャップを丁寧に埋めるプロセスです。単なる会話手法の問題ではありません。

高いレベルの仕事には、相互の正確な伝達・理解・協力に立脚したチームや組織の連係プレーが必須であり、それは職場における良好な人間関係に支えられます。そこで大切なのは、人間関係を構築・維持する前提となる考え方やその組織内の約束事です。

例えば私は、次の点を社内研修で強調します。
 ① 仕事の場に個人の価値観(このくらいは構わない)を持ち込まない
 ② 業務外の会話も仕事の一部と考える
 ③ 性別・年齢・肩書ではなく、個人の技能と適正を良く観察し、上手に配置・育成する
 ④ 自己表現が苦手なメンバーには、うまく交流できる機会をこちらから提供する
 ⑤ 誰か一人の問題や責任とせず、チームや職場で協議して、全員で問題解決にあたる
 ⑥ 問題を一人で抱え込んだり、隠したりする必要のない職場をつくる

法令・規則を遵守する、世間の期待に応える、といっても、人間ひとりでは限界があります。様々な角度から意見を出し、協力して支え合い、ときには厳しく注意する職場の人間関係がなければ、組織のコンプライアンスは前に進みません。

職場の品質改善は業務の品質向上につながります。満足できる仕事を通じて、支えてくる上司・仲間・お客様・取引先に感謝し、自分の成長意欲を高め、家庭や私生活の充実をはかる生き方が、組織で働く人々のコンプライアンスの目標だと私は思います。

「過去と他人は変えられない。しかし、いまここから始まる未来と自分は変えられる。」カナダの著名な心理学者・心理療法家であるエリック・バーンの言葉です。コンプライアンスは、役員・社員の一人ひとりに、自分の生き方、集団における自分の在り方を考えてもらう機会でもあります。職場のコミュニケーション改善が説かれる背景には、こうした考え方があります。