絵に描いた餅にしない研修

先週と今週、CSR・コンプライアンスに実直に取り組む建設業の大手企業で、リーダー研修の企画と講演を担当させていただきました。本年度は、原価のつけ回し、不正なキックバック、協力業者へのたかりなど、工事を営む業界ではポピュラーな不正行為をテーマにとりあげました。

研修のグループワークの設例は、現地中途採用の担当者に任せきり状態の地方の作業所で、原価のつけ回し、水増し請求による着服、施主への架空費用の請求、相見積の偽造などの不正が複数発覚するリアルな設定(同社の不祥事ではありません)です。参加者からは、現場責任者が巡回しきれない業務状況、書類の偽装を見破ることの難しさが指摘されたほか、リスクの高い作業所への特別監視、専門性の高い内勤による巡回と業務チェックなど、現場の感覚に合致した、なるほどと感心する対策が複数提言されました。同社のリーダーのみなさんの視点の高さにはいつも感心しています。

コンプライアンス研修というと、「あってはならない」、「ルールを徹底せよ」で終わってしまうパターンが少なくありません。でも、いままで社内公表を避けてきた「社内不祥事」を題材に、現場メンバーと内勤メンバーでチームを作り、原因や対策を率直に討議する研修を私は推奨しますし、その提案を採用してくださる企業や団体が増えてきました。企業のコンプライアンス活動が次のステージに移行している証左だと思います。

コンプライアンスを絵に描いた餅にしないためには、生きた教材を多様な立場から検討し、組織のリスク感度につなげるのが有効です。グループワークによって画期的な対策が生まれるわけではありません。そうではなく、その会社で不祥事が生まれる構造的な背景、マネジメントの役割、今日から職場でできることを参加者に考えてもらうこと、持ち帰ってもらうことが大切です。万能の処方箋はありません。しかし、自分たちで考える習慣は、漢方薬のようにじっくり時間をかけて成果に現れます。