経営の議論において「働き方改革」をどのように位置づけるか その1

9月15日、労働政策審議会から厚生労働大臣に対して「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」の答申が行われています。衆院解散・総選挙で成立の雲行きが怪しくなりましたが、この法律案は、長時間労働の是正のための労働基準法等改正と、非正規労働者の処遇改善のためのパートタイム労働法、派遣法等の改正が柱となっています。

一つ一つの改正は大河の一滴で、すべての改正が合流すると、戦後の日本企業の成長を支えてきた人事・労務システム、ひいては労働生産性の考え方や事業のキャパシティを根本的に見直さざるをえない結論に至ります。それを先取りして競争優位や持続可能な成長をいかに確保するか、その経営戦略の巧拙を問われるのが、働き方改革の本質です。

日本企業の労働生産性の低さの原因は、いまだに終身雇用・内部昇格のドグマを引きずっている点にあると私は考えています。自分の価値観で働きたいと思って入社しても、昇給、昇格のために、組織の利益になるよう自分が考えて動く社員となることを求められ、上司やお客様のニーズを忖度する行動が身に付きます。入社早々の社員に経営の観点を求める社内教育に誰も異を唱えません。

本来であれば各自各様の労働力を組み合わせて最大の成果を達成するはずの「マネジメント」が不在なまま、壮絶な人海戦術と仕事にへばりつく忠誠心で、個々人の踏ん張りに依存してきたのが実態ではないでしょうか。終身雇用を約束できなくなっても、なおも「家族的経営」、「仕事は自己実現」と旧体制を維持するところに亀裂が生じてきているように思います。

非正規労働者が4割を超えた現在、正規/ 非正規の本質的な身分格差を残したまま、均等処遇の努力を求める程度の対応では早晩行き詰ります。特に大企業の場合、内部昇格のドグマを撤廃する方向に舵を切り、マネジメントと労働とで人材要件・権限・責任・処遇を明確に区別し、それぞれの領域で人材の多様化・グローバル化を進めなければ、必要な人材を確保できず、企業の競争力・持続力は低下の一途をたどることでしょう。

また、労働時間の増大を招き労働生産性を低める要因の一つに、営業や業務における特例幅の安易な運用が考えられます。欧米企業は明確なワークフローとジョブ・ディスクリプションを中心に動きますので、あまり融通はききませんし、職能別組合の存在もあり、労働力の範囲でしか商品・サービスを提供しません。

一方、日本企業では、繁忙時の検査の簡略化、値引き限度基準を超えた競争価格、一時的要件不備の売上計上など、現場の都合による「特例扱い」を安易に許容する風潮があります。これらを実行する際の社内政治等で残業時間が増えていることも十分予想されます。企業の現場では、ルールどこ吹く風で、正当化の工作が上手な管理職や担当者が幅を利かせます。こうした特例幅が拡大しないよう、上級マネジメントで厳格に運用する必要があります。

働き方改革を規制強化への対応と矮小化すると将来的な競争力の劣後につながります。また、労働生産性の向上も、机上で考えたプランはうまく進みません。

明日は、具体的な改革方法について考えてみます。