神戸製鋼所性能データ偽装 第三者委員会の調査ポイント

ロイター配信によりますと、神戸製鋼所は性能データ偽装に関して、川崎博也会長兼社長を委員長とする品質問題調査委員会を設置するとともに、外部の弁護士ら第三者にも依頼し、事実関係の調査を進めているようです。本件は顧客企業に与える影響が大きく、監督行政の確認事項や関係する役員・社員も相当な規模にのぼることから、過去に遡っての事実把握に手間取っていると想像します。早晩、日弁連ガイドラインに準拠した第三者委員会を設置する流れになると思われますので、少々先取りして本件の調査ポイントに関する私見を述べます。

高性能製品の品質テストにおける不正やミスの防止策と管理状況
原因と責任の起点情報として、内部統制システムのどこに問題があったのかを明確にする必要があります。契約に基づく特別仕様製品の品質テストの手順・基準がどうなっているか、不正やミスを防止する対策はどのように組み込まれているか、現場の運用が適正をどのように点検・確認しているか、汎用製品の品質テストとはどこが違うか、などが調査のポイントでしょう。

素材メーカーには微妙な仕様未達品を値引して顧客に特別作用してもらう取引慣行がありますので、どの程度の未達ならば実用に問題ないかメーカーの現場は理解しています。その範囲ならば品質証明書を加工してつじつま合わせしても許容範囲だという安易な姿勢が、何らかのきっかけで現場に拡大したのではないか、一つの可能性として私はそのよう推測しています。

同じ不正行為が同一期間、4事業所に蔓延した経緯と要因
ニュースを聞いた瞬間は、素材メーカーの現場で散見される手抜きの事例かと思いましたが、同一期間に主要4事業所で不正が確認されるのは異常事態です。納期のプレッシャーなどと言う表面的な説明ではなく、真の原因を突き止めていただく必要があります。4事業所に強い影響力を行使できる役員・幹部はいたか、起点となる不適切な業務指示はなにか、事業所間で情報交換はあったのか、担当者の評価は何を基準に行われていたか、などが調査のポイントでしょう。

昨年のJIS違反事件を受けて実施したグループ全体の再発防止の実施状況
JIS違反事件を契機とした調査で、契約の特別仕様製品を対象から除外する流れは想定できません。なぜ8月末の内部通報まで把握できなかったのか、そもそも組織のうみを出し切る覚悟で経営トップが陣頭指揮をとったのか、現場の担当者と役員・本社との意識ギャップは奈辺にあるか、今回発覚した以外にも不正行為はないか、などが調査のポイントでしょう。

不正を監督すべき立場にあった役員・社員の現職状況
関与した役員・社員、監督すべき立場にあった役員・社員を調査側のメンバーから外して、調査の独立性・公正性を保つ必要があります。また、今後の責任追及においても重要な情報となります。

顧客等に対する会社の賠償責任、会社に対する取締役の賠償責任が巨額になると想定される本件で、業務執行機関が中心なってどこまで独立・公正な調査ができるか、私は強い懸念を抱いています。日弁連ガイドラインに準拠した第三者委員会を設置するにしても、メンバーの選任、報酬額の決定、調査協力の真摯さは、会長・社長以下の業務執行機関の意向が基本となります。

本来は、証券取引所が第三者委員会を組成・派遣して会社に費用を請求するのが良いのでしょうが、それができない以上は社外役員の皆様で第三者委員会を組成して、取締役会で公正・独立性を監督していただくのが最善の選択ではないかと思います。関係者の皆様、是非ご検討ください。