神鋼データ偽装事件と日産無資格検査事件の共通点

10月19日付け東京新聞の記事によれば、神戸製鋼所のアルミ・銅部門で1990年代に働いていたOBが共同通信の取材に応じ、過去に納入して問題とならなかった仕様未達品等の事例を「トクサイ(特別採用)範囲」と称するメモにして申し送りし、歴代担当者が無断納入の判断基準に使っていたとの証言があったと報じています。

「特別採用」とは、所定の仕様・規格・性能によれば非合格品となるところを、責任者や顧客の判断によって一定の合意と条件のもとに合格品扱いとすることで、企業間の購買取引契約では広く採用されている方法ですし、ISO規格の認証実務でもこうした方法を許容しています。

神戸製鋼所のケースは、これを自分達の都合のよい意味に捻じ曲げ、正規の手続きに乗せず、検査証明書に虚偽の記載をするインチキな方法によったところに問題があります。これは本来の特別採用ではありませんし、品質保証体系の自己否定にほかなりません。

同記事は、やはり90年代にアルミ・銅部門で1990年代に働いていた別のOBが無断納入を続けてきた背景を、顧客との取引長期化に伴って「大丈夫だろう、と馴れ合いみたいなところがあった」と説明したとも報じています。顧客の関係者が黙認するとは考えられませんが、メーカーの現場の正当化としては想定内の話だと思います。

10月11日付のブログでも指摘しました通り、なんらかのきっかけで同社内でこうした緩みが発生したのだと思いますが、複数の主要工場で同時期に行われていた点、そして前年の子会社による「ばね用ステンレス鋼線」のJIS基準違反で是正を指示徹底したはずなのに偽装撲滅が現場に届いていない点について、同社の説明責任が果たされていないように思います。

一方、日産自動車の無資格検査事件では、事件の公表後も4工場で無資格検査を継続していた事実を公表しています。子会社の湘南工場では、新車を出荷する前の最終検査のうち、ハンドルを左右に切った状態を確認する作業に、資格のない「補助検査員」が携わっていたようです。

この報道で思い出すのが東洋ゴム工業のデータ偽装です。本年2月7日、免震ゴム事件と同じ子会社「東洋ゴム化工品」の明石工場で、ゴム製品のデータ偽装が判明しましたが、その実行行為は、2015年春の免震ゴム偽装で経営陣が謝罪を重ね、大阪府警の家宅捜索を受けていた時期と重なります。

神戸製鋼所、日産自動車、そして東洋ゴム工業の例に共通するのは、経営や本社が大騒ぎになっていても現場では従来の不正行為が継続している点です。その背景には「納期優先の現場の風土」、さらにその後ろには「本社・管理層と現場チームとの断絶」が感じられます。

前記3社の話ではなくあくまでも一般論ですが、現場チームのリーダーは現地採用・現場出身の方が多く、本社から人事ローテーションで配置された部課長とは、形の上で上司・部下であるものの、異なる行動規準、鬱屈した感情、あきらめ感をもっているケースが少なくありません。

そうした組織に業務生改善、規則遵守を指示しても、従来のやり方を変えることへの抵抗、結果を出さなければ一方的に怒られるという意識などから、新しい指示が無視されたり、全員で命令違反を隠蔽したりする反応が珍しくありません。

以前、不祥事のあった企業で現場のリーダーにインタビューした際、「課長?  手堅く実績を残して出世コースに乗ることしか考えていないよ。現場の仕事に興味はないし、面倒なことを報告すると嫌な顔をするんだ。大卒のエリートと俺たちじゃ、住む世界が番うよ。コンプライアンス?  そりゃ、偉い人達の話だろ。やり方を変えたら、納期に間に合わないで怒られるだけ。現場の人間は今日やる仕事をこれまでのやり方で片づけることしか考えていないよ。どんなに頑張ってもリーダーどまりだし、それだけの給料しかもらってないよ。」と返されました。(でも、このリーダーは仕事を誇りに思い、調査にも一番協力してくれました)

マスコミ的には、「統制のとれていない組織」の一言で片づけられてしまいそうですが、コンプライアンスやリスク管理の実務は、そうした組織の特性まで配慮し、現場の行動が是正されることをしっかり見届ける必要があります。

不祥事が判明して対応に焦る経営や本社が、自分らは指示したつもりになっている事態は、悪意はないとはいえ、会社をさらに窮地に追い込みます。くれぐれも注意しましょう。