神戸製鋼所の原因究明・再発防止策報告書を読んで

11月10日に神戸製鋼所が「当社グループにおける不適切行為に係る原因究明と再発防止策に関する報告書」を公表しました。今回の不正発覚までの経緯、発覚後の初動、判明した不正の全体像、原因分析、再発防止策、外部調査委員会の設置目的などが語られており、今のタイミングで意味のある公表だと思います。

まず、鉄鋼事業部門の関連会社で昨年6月に発覚したJIS法違反事案を受けたグループ全体に対する過去1年間の出荷実績に対する自主点検要請を契機に一連の検査偽装が判明した事実が述べられています。不祥事を起点とした自浄過程で判明したことは、若干ながらもプラスの材料だと思います。判明直後の初動調査から公表に至る対応も十分理解できる内容で、特段の疑問は感じません。この部分たけでも先行して公表しておいた方がよかったかも知れませんね。

同社は報告書で「本件は、所属する事業部門・事業所、製品の種類、製造体制や工場規模により違いはあるものの、多くの不適切事案において『複数の部署に跨る広範囲の関与者』がおり、しかも『長期間にわたり不適切行為が継続された』こと、さらにそれが『社内で公に発覚しなかった』という特徴を持つ」とし、「今回、工場で起きているこれほど重大に事態について、経営が問題として取り上げ、対応できなかったこと自体が大きな問題である」と自己分析しています。この問題認識は適切だと思いますし、事情を把握している役員・幹部がなぜどのように事態を放置したのか、そうした責任を基礎づける事実を外部調査委員会が明確にしてくださることを期待しています。

しかし、原因分析の各論に至ると、経営のほころびがめだってきます。まず、事業部門に対する収益重視の評価を推し進め、かつ経営のスピードと効率化から自律的運営を促進し、本社による評価が収益に偏っていたため、工場での生産活動に伴い生じる諸問題を把握する経営や本社の姿勢が欠けていた、とあります。品質は現場で作り込みます。ものづくりの企業の経営が品質管理を軽視するというのは自殺行為に等しいと思います。

それに続く個所では、不適切事案が発生している工場・事業所は、収益貢献を強く求めるあまり、自社の工程能力との対比や試作品の評価及びそれらに関する組織的審議が不十分なままで仕様書を取り交わすこともあったと考えられる、と述べられ、「自社のものづくりの能力の把握を軽視した体質」と自己分析しています。でも、それは、製造能力の裏付けがないままに事業部門が詐欺的に受注していたとも解釈できます。ここは経営の事業管理の不備を示す、非常に重要なポイントだと思います。

さらに、不適切事案が発生した事業所は、製造拠点の専門性を重要視するあまり、同じ事業部門の中でも各製造拠点相互の異動は少なく、閉鎖的な組織運営となっていたため、不正の当事者であった者の上位者昇格や、製造部署と品質保証部署との人的混在が生じ、牽制機能が働かなかったと述べられています。人事ローテーションも必要ですが、品質、法務、経理といった牽制機能は本社の該当部署に所属する社員を現場に派遣・駐在させる方式を導入しませんと、根本的な治療にならないのではないでしょうか。

なお、報告書の再発防止策では、日本鉄鋼連盟のガイドラインに沿って、試験検査結果のサーバーヘの自動取り込み、並びに顧客仕様との自動照合を導入するとあります。人為的に書き換えられる機会を排除することが、偽造防止には最大の予防となりますので、この点は他社も参考されるとよいと思います。