神戸製鋼所 役員の関与と妄言

神戸製鋼所の製品検査データの改ざん事件に関して、現場の従業員だけでなく、過去の複数の役員も不正を認識していたことが関係者への取材でわかったと11月3日のNHKのTVニュースが報道しました。

関係者の説明によれば、不正を認識していた役員はいずれもアルミなどを製造する工場で勤務していたときにデータの改ざんを知り、その後は工場長などを経て本社の役員になったが不正については黙認していたことのことです。また、検査データの改ざんは少なくとも40年ほど前から行われていたということで、会社の経営陣の間で不正の情報が共有されず、対策が取られていないことが関係者への取材で新たにわかったそうです。やはりという感じで、いずれも想定内の事実ですね。

製造業の現場は最低限の仕事で終わらせたいと考える傾向があります。ですから、顧客のテスト基準に収まる範囲であれば作り直しを避ける行動に現場が走るのは、ある意味で想定内であり、それをできないように内部牽制システムを整備するのが役員の仕事となります

しかし、NHKのTVニュースによりますと、元役員の1人は取材に対し、複数の役員が不正を認識していたことを認めたうえで、「不正の背景には納期優先、コスト優先の考えがあり、工場にプレッシャーをかけた経営陣にも責任がある」と話したそうです。

腰を抜かすほどの「ぬるさ」ですし、主要因は現場の暴走とも解釈できるような発言で、社員のみなさんはどんな気持ちでしょう。せめて「厳しい仕事の環境のなかで現場に無理をかけないよう要員や設備の投資を行うべきだった」「40年間の悪習を絶つべく、事実を把握している役員は改善を提言・推進すべきだった」程度のことは言っていただきたかったです。

このTVニュースの価値は、重大かつ組織的な不正を知った役員が事実を隠蔽し、なんら改善措置を取らなかったことが、取締役の善管注意義務違反を構成するのではないか、会社は該当の取締役に損害賠償を請求すべきできないか、という会社法の問題に発展するところにあります。有名な無認可添加剤入り肉まん販売事件のダスキン株主代表訴訟( 2006年6月9日大阪高裁判決)になぞらえて考えるとわかりやすいと思います。

神戸製鋼所は、1999年の利益供与事件、2006年の工場ばい煙測定値の不正操作、2009年の違法政治献金、そして2016年の子会社によるJIS測定値の改ざんとと重大事件が続いており、歴代の社長や会長が辞任しています。現社長は、法令順守の徹底を最重要の経営課題に挙げていると聞いています。

おそらく神戸製鋼所では、仕事とコンプライアンスが乖離して、別物と考えられているのではないでしょうか。また、仕組みを抜本的に見直さず、意識の改革のようなことをいってお茶を濁しているのではないでしょうか。そうでなければ、これほど不祥事が続くことは考えられません。

それにしても、独立第三者委員会が発足して、精密に事実を認定する矢先に、この役員自分が考える核心部分をはどうしてマスコミに話したのでしょうか。客観的にいえば、わかっていない→警戒していない→気づかない→とにかく謝罪・反省の姿勢を示そう、という感じではないかと思います。第三者委員会も困っていることでしょう。

新しいぶどう酒を古い革袋には入れたら両方がダメになります。まずは、鉄連のガイドラインあるように、誰が担当しても絶対に改ざんできないデータ処理システムなどの物理的な防止措置を導入することです。そのうえで、役員・幹部、中間マネジメント、現場のそれぞれに対して、求める業務品質、正しい手順、納期を達成できそうもないときの報告・善後策決定の手順、禁止事項などを丁寧に浸透させるアプローチが最良の再発防止策だと私は考えます。