相談役・顧問の情報開示

東京証券取引所が上場企業に対して、2018年から提出するコーポレート・ガバナンス報告書で相談役・顧問の氏名や業務内容、報酬の有無などの任意開示を促すことが発表されました。でも私はこの件に関して、企業の関係者から対応を相談された経験がありません。それはそうですね、企業の関係者の方が本当の意味をよほど知っているのですから。

相談役・顧問としての処遇は、経営トップ経験者の当面の生活保障の色彩が濃いと私は理解しています。景気の良いころの企業内では、退任したからといってみすぼらしい生活をされては会社の品位にかかわる、という言い方をしたものです。外部の名誉職に就く場合も、黒塗りの車、専用の小部屋、立派な応接室、庶務を代行する秘書は、欲しいところでしょう。後輩の社長がこれを取り上げるのは勇気が必要です。

相談役・顧問が人的ネットワークや経験面で後継体制をサポートすることもないではありませんが、一般論としては、悪弊の解消や新規の挑戦にブレーキとなる場面が多いように感じます。組織の原理はポスト競争ですから、企業の関係者は相談役・顧問の廃止は大歓迎です。ただ、猫に鈴をつける公式の理由が必要で、東証への報告書での任意開示だけでは、社長も二の足を踏むのではないでしょうか。退任役員の処遇について、コーポレートガバナンス・コードで指針を明示して欲しいと希望する企業の関係者は少なくありません。

相談役・顧問の設置が必要なら堂々と説明すればいい、というご意見もありますが、明白な特別の事情がある場合を除き、丁寧に説明すればするほど現経営体制の自己否定になりますので、それも無理な注文だと思います。新規に関連組織を作り、その代表として処遇する回避策もありますが、投資家への説明責任を考えると、頭隠して尻隠さずの印象が残ります。また、創業者、創業家を聖域化する企業もありますが、そうした発想は上場した段階で断ち切る必要があります。

この問題は、リスクやコストの面から株主・投資家の懸念を払しょくする、会社の将来を担う若手役員や社員のモチベーションを維持するといった観点が本質です。方向性として制度の廃止に向かうことは了解されていると思いますが、そこに至る過程のルール・メイキングで悩むケースは増えると予想されます。ルールだけで割り切るのも難しい問題なので、退任される役員個人の倫理観として厚い処遇を固辞し、間接的に後進の支援をするのが理想なのでしょう。そうした方向に向かうには、現役中の報酬・賞与(ストックオプションを含む)を十分なものに手当てする必要があります。むしろそちらの検討や透明化を促進することが内外から納得感のある経営につながると私は考えます。