現役世代拡充促進法の提案

9月1日付の日本経済新聞に「公務員定年65歳に 19年度から段階的に延長 政府検討」の記事がありました。65歳を軸とするのは、公務員年金の支給開始年齢の引き上げに合わせるためと記事にはあります。

民間事業者では既に、高年齢者雇用安定法第9条により、高年齢者雇用確保措置として、① 65歳まで定年年齢を引き上げ、② 希望者全員を対象とする、65歳までの継続雇用制度(再雇用、雇用延長)を導入、③定年制の廃止のうちいずれかの措置の実施が義務づけられています。同法の施行時にも、厚生年金の支給開始年齢に合わせるためと説明されました。

記事にもある通り、8割以上の企業が「再雇用」を採用しています。当初は最低賃金並みの報酬水準、短い総労働時間でスタートするのが賢明という雰囲気でしたが、最近は労働力不足や採用・教育費用圧縮の流れのなかで、65歳、70歳まで戦力化する大手企業もメディアで紹介されるようになりました。

本来は定年廃止や定年延長が望ましいわけですから、身分の安定している公務員が原則、定年延長で制度化するとなりますと、給与水準を下げたとしても官民格差を拡大しますし、労働力の水準に欠ける高齢職員をどのように引退してもらうか真剣に考えてもらいませんと、再雇用制度のもとで生き残りに苦労している方々から怨嗟の声が生まれるでしょう。

私は、そもそも「高年齢者雇用安定法」という法律のネーミングが失敗の原因だと思っています。我が国の社会保障制度を維持するには、被用者保険の適用拡大、年金支給開始年齢の引き上げ、負担能力に応じた医療給付、介護・情報通信・地域サービスなどへの職種転換、そして社会保険料を負担する人数の増加が必要で、この最後の実現手段が議論されるべきテーマが「現役」の定義の見直しです。

ですから「現役世代拡充促進法」とでも名付けて、民も官も、若年労働者の一定割合の雇用確保と70歳くらいまで通常戦力して働いてもらうシステムに転換するよう、義務付け、インセンティブ、ペナルティ等で方向づけるのが正しい方向なのだと思います。

「しかたがないから高齢者に就業機会を提供する」といった上から目線の風潮は、個人の尊厳を傷つけます。65歳で引退して現在の水準の社会保障を受け続けることは理論的に不可能です。長すぎる老後生活が本人にも家族にも負担であることは、多くの人々が語るところです。

人口減少・生産年齢減少・超高齢化の同時進行は、人類が経験したことのない社会構造です。日本の社会は人類初の壁に突き当たっています。次世代に負担を押し付けないためにも、我々は労働と社会保障制度の整合性を知恵と勇気を出して合理的に決断しなければなれません。

目先の年金・保険給付が減るとか、社会保険料が増えて企業の経営条件が悪化するとか感覚的な反対論ではなく、正確なシミュレーション、合理的な政策リストの比較に基づいて科学的な分析で社会の方向性を決める時期に来ていると考えます。