東芝「内部管理体制の改善報告」を読んで

東芝は、東証・名証による特設注意市場銘柄の指定解除を受けて、10月20日に「内部管理体制の改善報告」を公表しました。すでに目を通された方も多いと思いますが、以下に私の感想を述べます。

「3.当社における問題認識」では、歴代社長によって目的必達へのプレッシャーが繰り返され、短期的利益を過度に追及する方針を踏襲してきたという基本認識の下に、取締役会、指名委員会、監査委員会、内部監査、内部通報、職責・コンプライアンス意識、経営判断プロセス、会計処理、開示体制等の機能不全を記述しています。

経営トップの圧力に屈した、情報の提供が不十分だった等々、当時の状況と不適切な結果の「相関関係」は指摘されているものの、事実と結果の「因果関係」のレベルでは報告が見当たりません。確かに、東芝規模の企業ではガバナンスや内部統制の組織や仕組みが多様かつ複雑に絡み合うがゆえに解析が難しくなることもあり、時間の経過に即して組織行動を分析・再現するのは事実上不可能だと思います。独立第三者委員会を設置しても、短期間に「因果関係」を把握するのはおそらく困難でしょう。それにしても、突っ込み不足かなと思います。

また、責任論を避けようとしたのか、歴代社長以外には「主犯格」がいない風の書きぶりになっている印象を私は受けました。役員や部課長の中にも「忖度や保身でトップの影響を増幅させたA級戦犯」はいるでしょうし、仮に開示はしないとしても厳正に退場命令を下さなければ、復興に向かう現場のモチベーションは維持できないのではないかと心配します。

「4. 問題に対する改善策の内容と実施状況及び現状での課題認識」では、経営体制の強化、経営方針の見直し、ガバナンスの強化、職責・コンプライアンス意識の強化、経営判断プロセスの強化、適正な会計報告・開示の体制の強化、子会社管理の強化を記述しています。詳細にみれば100項目前後の対策が説明されており、そのまま経営管理の参考書やショッピングリストになりそうです。いずれの対策も「改善」であることは確かですが、予定調和の範囲であって、焦りやがむしゃらさを感じません。その「気取り」や「保守性」が東芝解体の危機を招いたのではないかと、私は感じています。

「経営トップの暴走とその連鎖」が根本的な問題であれば、その再発防止にもっと踏み込んでもよかったように思います。例えば、社外役員中心の経営機能と代表取締役以下の業務執行機能の双頭体制にステージを上げ、①取締役会・指名委員会・監査委員会の計画・運営は基本的に社外役員に任せる、②常勤の社外役員を設けて日常的な業務執行会議体や内部監査まで深く介入する、③現場と社外役員の接点を増やして業務執行を牽制するなど、他の日本企業に先行する措置に踏み込むことも考えられます。

東芝のケースは、経営トップの言動によってガバナンスや内部統制の仕組みが簡単に無力化されてしまうこと、ガバナンスや内部統制に万能の処方箋はなく「永久の未完成」であること、監査や第三者の評価も対象組織の実体を把握しきれないことなど、地に足の着いた経営管理の必要性を改めて教えてくれました。みなさまも過信せずに自組織の経営とマネジメントに務めてください。