有給休暇消化率は世界の非常識?

9月30日付の日本経済新聞に、社長100人アンケートの結果を受けて、経営者の9割が有給休暇の取得率を引き上げると回答し、2020年までに取得率70%を目指す経営者が5割に達した、との記事がありました。有給休暇の取得率とは、算定期間中の取得日数計を付与日数計で割って、100をかけた数値です。厚生労働省方式では、取得日数に繰越取得分を含みません。平成27年の平均取得率は 48.7%と公表されています。

さて、日本経済新聞では「国内の主要企業が社員の有給休暇取得率の引き上げに動く」と解説していますが、欧米先進国の人々には奇異な解釈に映ると思います。EU加盟諸国では、委員会指令に基づく国内法整備により、事業報告における非財務情報の義務的開示が進んでいます。特に労働分野は開示対象情報が多く、総労働時間、就業日数、時間外労働、労働災害件数などを義務的開示事項とする国内法が多くを占めます。しかし、この非財務情報の開示において、(私の記憶力減退かもしれませんが)休暇取得率という項目を見た記憶がありません。よく言われるように、欧米では労働は「苦役」であり、休暇は「労働から解放される権利」であることから、特別に開示せずとも、100%消化が当然の前提になっているようです。

労働基準法が定める有給休暇は、心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するために付与される休暇制度です。しかし、日本企業の職場では、病気や不慮の事故など緊急事態発生時の備えと教えられ、仕事より私用を優先することに上司や周囲の冷たい視線を感じる現実があります。さまざな休暇の種類を増やす企業もありますが、この問題の本質は、仕事の分担や進め方が前近代的で、人海戦術の域を出ていない職場が多いことではないかと私は考えます。そこにメスを入れず、職場にへばりついて長時間頑張る人が一番社会社に貢献していると感じる職場の在り方が問題なのではないでしょうか。

一連の業務プロセスを効率的に再設計する、情報通信技術やAIで情報の精度向上や単純作業の削減をはかる、業務のモジュール化と担当の代替可能性を高める、職場のメンバーを多能工化する、といった経営投資によって職場が清流化すれば、無駄がなく管理の行き届いた仕事が可能になります。そのような成熟した職場になれば、ワーク・ライフ・バランスの上手な人、丈夫で長持ちする働き方のできる人こそが、知恵と経験で価値を生む、本当の戦力であることがわかってくると思います。