日産6工場の無資格検査について

9月29日夜に日産が公表した、資格を持たない従業員が新車の完成検査に携わっていた問題は、認定検査員が行うべき作業を同じチームの補助員が担当してしまったという、いずれの企業でもありがちなケースだとは思いますが、非常に疑問の多い事案です。今後の調査で詳細な事実が明らかになると思いますが、現時点での疑問を以下に述べてみます。

まず、追浜、栃木など主要6工場で、社内認定の資格がない従業員が完成工程の検査の一部項目を担当していた、検査院のバッジをつけていない従業員が検査作業を行っても周囲は指摘しなかった、という点です。適用法令等の解釈や業務方法の指示を本部が間違わない限り、違反状態が全社規模で拡散する可能性は少ないと考えられますが、いったい何が起きたのでしょうか。

次に、内部の点検・監査でこれまで網にかからなかった点です。報道は、組織的な違反が恒常化していた疑いもあるとの論調ですが、規制事業である自動車メーカーですから、このような不適合状態を認識していたら即刻是正していたと思われます。また、内部関係者の情報提供があったのか否かはわかりませんが、国土交通省による9月18日以降の立ち入り調査で発覚したそうですので、日産側もリスクの認識がまったくなかった印象を受けます。

三つ目は、記者会見等の対応です。国土交通相が「(道路運送車両法の型式指定)制度の根幹を揺るがす行為だ」と厳しいコメントで批判し、販売済み車両の大量リコールに発展するかもしれない状況でありながら、経営の責任者ではなく担当の幹部従業員が会見し、「未認定の従業員が行ったとはいえ、出荷に必要な検査項目はすべて行っている」「この検査で不具合が見つかることはまれだ」「安全性に問題はないと思うが、安心して乗ってもらうために再検査する」等々の、発言をしている点です。

車両一台ごとの安全性の検査・保証という国の役割を自動車メーカーが代行する現行制度では、実害の有無ではなく、決められた手続・基準を完璧に遵守することが大前提になります。記者会見での説明は、いかにも無責任で、問題の本質を理解していない印象を世間に与えてしまっているように思います。これでは、なんのために記者会見を開いたのかわかりません。マスコミ対応では、伝えたい気持ちは書いてもらえず、質疑応答の一言が切り取られて拡大します。専門家の指導を受け、準備を整えて臨むことが大切です。

燃費不正問題で経営危機に陥った三菱自動車を子会社化した日産が、オペレーションの失策から安全性・信頼性の地雷原を踏んでしまったのは、いかにも皮肉な事態です。みなさまの会社の現場にも同様のリスクが眠っていると私は思います。どのような背景・原因でこのような不適正行為が放置されていたのか、今後の説明を注目しましょう。