日産・無資格検査事件の続報に学ぶ

無資格検査事件に関連して2週間ほどの出荷停止を決めた日産自動車。10月21日付けの日本経済新聞にその影響が報じられています。現場の判断ミスや手抜きが、上流・下流のサプライチェーンにどのような迷惑を及ぼすか、教材として学ばせてもらいます。

まず、協力会社への迷惑。同記事によれば、主要取引先の中には、ラインを止めて一部従業員を出勤させていないメーカーもあるそうです。日産に依存度の高い取引先は業績への影響も覚悟していると記事にはあります。国内の1次仕入れ先は2,239社もあり、2次、3次まで含めて考えれば影響は甚大です。この種の事件では、仕入れ先の救済・支援は聞きますが、損失の補償まであるのでしょうか。来年以降の単価交渉に反映するのでしょうか。

次に、販売店への迷惑。同記事によれば、日産は受注生産に近いため、全国億2,100の販売店は、顧客の信頼を失うだけでなく、納車の遅延、販売機会の損失など、目に見えない損害を被っているようです。メーカーの不始末でも、お客様への謝罪と調整の連絡に追いまくられるのは営業の現場です。相次ぐ品質リコールも含めて、メーカーに対する不満や怒りの鬱積が、製販の信頼関係、一体感を損ねかねません。

そして、本体の業績への影響。証券会社アナリストの予測によれば、2週間の出荷停止で販売で2万台、営業利益は100億円程度の提供が出る、と同記事にはあります(その後、不正の継続で全完成車の国内向け出荷停止に拡大し、10月1~20日の国内販売は前年同月に比べて2割減少したとの報道があります)。その他、国内他社との連合、ブランド価値、金融商品の格付け等への影響も、可能性として否定できないのは記事の通りでしょう。売り上げ獲得に向けるべき経営リソースが事件の後始末に費やされることで、社員のモチベーション低下が心配されます。

もう一つ気になるのは、10月22日付け日本経済新聞の記事です。検査正常化の指示が即座に徹底しなかった理由を、「課長(管理職)と現場とのコミュニケーションにギャップがある」と社長が説明したことに、社内の一部から反発の声があがり、現場代表との意見交換会で「むしろ役員や管理職の責任の方が重い」と社長が弁明したとの報道です。

記者会見の社長の説明を聞いて、人間どおしの伝達・理解だからそういうこともある、課長にも係長にも不十分な点はある、と世間は理解したと思います。それを現場が被害者意識で受け取るのは、また社長が弁明するのは、経営・管理者と現場との間に大きな溝があることを自ら認めたことにならないでしょうか。他社ではあまり見られない状況かもしれません。

衝突・喧嘩、違法なパワハラ、労使間の対立感情など、職場における人的要因がコンプライアンス違反や業務品質の低下の背景となるケースはめずらしくありません。最終的な責任は経営・管理職が負うにしても、法令・規則を順守し、品質を作り込む責任は現場にもあります。これは、モノづくりの誇りといった抽象的な話ではなく、労働契約にもとづく義務のレベルの話です。

日産の課長・係長のコミュニケーションがどうであったかはわかりませんが、世間はそのように内部の事情に興味はなく、信頼できる安全な製品を送り出して欲しいと求めているだけです。労使協力の姿勢を見せて、難局を乗り切って欲しいと願っています。