成分偽装の不祥事を考える

風邪薬の成分として使われる解熱鎮痛剤アセトアミノフェンを製造している国内大手の原薬メーカー「山本化学工業」(和歌山市)が、2009年2月から、米国産原料から製造したアセトアミノフェンに、輸入した安価な中国製を混ぜていたほか、原料にも中国産を無届けで使用したとして、和歌山県は6月28日、医薬品医療機器法に基づき、22日間の業務停止命令と業務改善命令を発出しました。同社では、抗てんかん薬の成分ゾニサミドの製造でも、使用する薬剤を無届けで2015年11月から変更していた事実も判明しています。また、2015年11月と今年5月に和歌山県等が立ち入り検査を行った際、偽造した製造記録を提出していたことも報道されています。

 医薬品の製造方法や原料を変更する場合、審査を担う独立行政法人「医薬品医療機器総合機構(PMDA)」に届け出なければなりませんが、同社はこれを怠る違反を意図的に犯していました。本件で中国製原材料を混入させたアセトアミノフェンは、品質面では問題はないとの評価結果が既に厚生労働省から公表されていますので、最終利用者に被害はなさそうです。しかし、同社のアセトアミノフェンを購入利用している製薬会社は若干の風評被害を受けているかもしれません。

さて、昨日(16日)の報道によりますと、不正開始の理由について同社関係者は「別製品の試作に使った中国製原料13tを在庫処分するため」と和歌山県に報告していたようです。一方、県による処分当時の報道では、同社関係者は「受注し過ぎて製造が間に合わなかった」とか「原材料が混ざりやすくするため使用する薬剤を数年前から変更した」とか説明しているとの記事もありました。また、社長や製造部門の責任者は「不正は知らなかった」と話しているとTVニュースでは報道されていました。

山本化学工業を属性情報をネットで調べてみますと、アセトアミノフェン国内市場の80%を占める一方、昭和21年5月設立、資本金1125万円、売上高/13億円 、従業員数/30名(男24名・女6名) 、平均年齢/34歳、主な事業所は本社工場・大阪営業所 とのことで、かなり小規模な事業者であることがわかります。本件は、厳格であるはずの製薬会社の調達管理に「死角」があることを、図らずも顕在化させてしまいました。

大手の製薬会社は食品会社は、国内法の遵守はもとより、国際基準の厳しい品質基準や安全衛生基準に適合する社内管理体制を構築・運用していますが、サプライヤカーから仕様どおりの原材料が調達できているのか、使用以外の不純物の含有は表示の偽装はないのか、というレベルの話になりますと、完璧な保証体制を公言できる企業は皆無に等しいのではないかと私は感じています。しかし、本件も内部関係者の証言や自治体の立ち入り調査で判明したのですから、サプライヤー管理手段の工夫次第で、牽制や是正指導を行うことも可能と思われます。この点は、特に製薬会社や食品会社において、コンプライアンスの重大な管理テーマだといえます。

また、本件でも、「米国産でも中国産でも大差ない」、「黙ってればバレない」といった安易な考えが会社内部にはびこっていた様子がうかがえます。山本化学工業の詳細を私は知りませんが、安易な経営の一言に尽きる印象を受けます。世間の目は結果だけでなくプロセスの適正確保にも向けられていること、ならびに内部告発の時代に不正隠しは命取りになることを経営者から現場まで共通認識する必要があります。他人事とせず、各社でも足元を点検していただきたいと思います。