悪質クレーマー対策のガイドライン

9月4日付け東京新聞に、流通業などで働く一般労働者で作る産業別労働組合「UAゼンセン」が、現場で働く組合員が一年間議論を重ねて、悪質クレーム対策のガイドラインを作成したとの記事が載っていました。

悪質クレームとは、暴力をふるう、怒号や暴言を浴びせ続ける、異常に長時間の対応を強いる、土下座しての謝罪を求める、担当者の解雇を求める、謝罪文書の提出を強要する、適切な対応後も嫌がらせを続ける、営業妨害のネット書き込みをするなどの、社会通念に照らして限度を超えた言動をいいます。その一部は犯罪に該当する可能性もあります。

この問題の本質を同組合は次のように説明しています。「流通産業で働く仲間は、『悪質クレーマー』と直接対峙しており、場合によっては、大きなストレスを抱え、心身に負担がかかっています。また、『悪質クレーム』に対する対応には企業ごとに違いがあり、消費者への過度な対応により、誤った消費者意識をつくりあげるケースも生じています。また、 ①「悪質クレーム」に起因する退職者の増加 ②採用時に敬遠される等が産業の抱える課題としてあげられます。」(同組合のWebサイトから引用)

この説明の通りだと思います。良好な就業環境の提供は役員や管理者の基本的な責務です。特に現場で非正規労働が多い業態ですから、担当者任せにするのではなく、限度を超えた難癖には会社が前面に出て、毅然と対応することが大切です。しかし、店員が強い態度に出れないのをよいことに、自分の優位性を顕示するの幼稚な言動(うっぷんばらし)ですから、悪意や害意の立証が難しく、なにが「社会通念に照らして限度を超えた」かも曖昧で、事業者として対応に苦慮します。

パワハラの問題も当初は「感覚の個人差」と言われていましたが、厚生労働省が職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議を設置し、ワーキング・グループ報告を公表したことによって実施的なコンセンサスが形成され、議論がしやすくなりました。厚生労働省の対応は、メンタル疾患、自殺などの重篤な問題が顕在化したことが背景にありますが、流通業の現場に立つ方々にとっては、悪質クレーマーの問題もパワハラとまったく同じ構造です。

多様な労働者による多様な働き方が必要となる日本の社会において、価値を生まない労働は極力減じていく必要がありますし、労働者のストレスを減らして、丈夫で長持ちできる働き方を追求しなければなりません。ここは、消費者庁や日本弁護士連合会が中心となって、公式な定義と対応のガイドラインを設けるのが一つの解決方法だと思います。

ただし、文化の違いには一定の配慮が求められます。最近、某観光都市で利用したタクシーの運転手さんが「ある地域から来ている外国人観光客は料金にクレームをつけて値切りを要求してくる、本当は乗せたくない」とぼやいていました。事業者サイドで一方的に決められる問題ではありません。

いろいろな意見の出るテーマだとは思いますが、私は「公式ガイドラインによる社会的コンセンサス」と「誠意をもった対応以降は毅然とした組織対応」に一票を投じたいと思います。みなさんも、一度考えてみてください。