土壌汚染事案の対応について

私が理事・運営委員を務める日本CSR普及協会の2017年度第2回研修セミナ「改正土壌汚染対策法・廃棄物処理法解説」には約100名の方がご参加くださり、好評理に終了しました。ご参加くださった皆様にお礼申し上げます。私も会社の保有地で土壌汚染が判明した際のリスク対応の実務について、初動段階で社内で認識を共有すべき点について概説させていただきました。

土壌汚染案件では、汚染事実の報告、 健康リスクの回避、周辺不動産価値の下落防止、具体的損害の補償などが対応テーマとなります。多様な活動でありながら終始一貫性が求められますので、社内に対策本部を設置して情報の統一と司令塔の機能を担うこと、外部の専門家としてリスクコミュニケーションのコンサルタント1名、土壌汚染対応に詳しい弁護士1名、民事・刑事に強い法律事務所1カ所を確保することをお勧めします。

経営者のなかには、土壌汚染が判明したら高額な費用で必ず対策を講じなければならないと誤解している方を見かけます。「汚染状態に関する基準」の超過は自治体による区域指定につながりますが、「健康被害が生ずるおそれに関する基準」を超えなければ特別な対策は求められません。過剰反応すると隠蔽リスクが増えますので気をつけてください。

実務で頭が痛いのは、汚染された土壌はすべて掘削して土を入れ替える、という市民感覚の誤解が広く浸透している点です。土地所有者には、時間がかかっても、対策の相場観を理解してもらう必要があります。

土壌汚染対策法は、掘削除去などの過剰な対策を求めるものではなく、対策コストを削減しつつ、土地の有効利用を促進する内容になっています。具体的には、有害物質の暴露や地下水の利用など健康被害のリスクが具体的にある場合は、盛り土、舗装、封じ込め、地下水の揚水浄化などの対策を講じます。

もうひとつ大事なのは、会社による自主的な調査・対策・公表であるとの姿勢を終始一貫して維持する点です。リリースの文章などで、「自治体の指導・監督を受けながら」という表現を見受けることがありますが、「自治体に報告して助言を受けながら、法律や条例を参考に、当社の判断として」と書くべきでしょう。

都道府県は調査命令や措置命令の権限を持ち、住民の生活環境の平穏を守る立場にありますので、後々対応のズレや矛盾を無駄に招かないよう、関係のプレスリリース、公式ホームページの掲載情報、近隣説明会での説明及びQ&Aは、事前に自治体に目を通してもらい、アドバイスをもらうことをお勧めします。

そうした基本姿勢で自治体、近隣の土地所有者・住民の信頼を獲得し、かつ適切なリスクコミュニケーションを行うことが、調査・対策の自由度を広げ、合理的なコストで責任を果たす結果につながります。

なお、同業他社でも想定される原因ならば、監督官庁から同業他社に調査の要請があるかもしれませんので、業界団体とも事前調整すべきでしょう。