品質検査偽造2社のトップ退任人事について

一連の品質検査偽装を受けて、三菱電線工業は社長が辞任して代表権のない取締役に退く人事を、また東レハイブリッドコードは社長が辞任して常勤嘱託社員となる人事を公表しました。詳しい背景や事情はわかりませんが、製品の購入企業が安全性確認の作業に怨嗟の声を上げ、監督行政も認識や対応の甘さに怒りをあらわにしているなか、この人事はいかがなものかと私は感じました。

リスク対応事案のサポートで私が重視するのは、客観的な事実を説明し、適切な謝罪と補償方針を伝え、連鎖的批判や被害者感情の鎮静化をはかり、一刻も早く正常な事業活動に戻すことにあります。経営トップの進退は、こうしたシナリオに効果的な内容で、タイミングを見計らって行うことが肝要です。2社のトップ退任人事を拝見すると、中途半端な人事をなぜこのタイミングで行うのか、私には理解できません。むしろ、会社が置かれている状況をよく理解せず、早期の幕引きをはかっているのではと勘ぐられる副作用を心配します。

経営倫理やコンプライアンスの問題は、その良し悪しを会社ではなく世間が決めます。世間の見方に立って空気感をよく読んで対応しませんと、解決どころか二次災害を引き起こしかねません。世間の見方は、「現場の逸脱行為は管理職が見ていないから」であり、「管理職が見ていないのは経営がそれを許さない管理体制を作っていないから」という点にあります。別の言い方をすれば、細部の完成責任は管理職にあり、結果の全責任は経営層にある、ということです。

例えば、最初の記者会見で社長が「現場の不祥事は全て自分の責任である」と言い切れば世間も比較的好意的に受けて止めてくれますが、「経営・管理と現場との間にギャップがあった」、「現場の一部に逸脱があった」という客観的な言い方では反発を招きます。最初に経営が責任を認め、原因究明、再発防止、自分を含めた関係者の処分を公正かつ透明に進めると説明すれば済むものを、どうして中途半端な発言で後退させるのか、とても残念な気持ちで拝見するケースが少なくありません。

今回の検査偽装によって原発の再開申請を遅らせる事態も起きているのです。購入企業の役員・社員の方々が、最終需要者にどれほど怒られ、人手不足で多忙のなか安全確認作業を説明業務に追われ、心身疲労の限界を越えているか、2社は考量したのでしょうか。不足の事態が起こると、組織力学が働いて原理原則がおろそかになりがちですが、まずはお客様や流通・取扱企業に与えている迷惑を並べ揃え、そこから逆算して考える必要があると思います。読者のみなさまも、不祥事が発生したときにはこの点を忘れないでください。