取締役の多様化

議決権行使助言会社が公表する方針の中で、社外取締役や女性取締役の増強など「取締役の多様化」を求める考えが最近示されています。

例えば、社外取締役を取締役総数の1/3以上とする案があります。社外メンバーがこの規模になりますと、取締役会の役割・上程事項、議長・議事運営などを抜本的に変えませんと社外取締役の存在価値が発揮できません。

鶏が先か卵が先かの議論になりますが、土俵を変える準備にめどをつけてからそれに相応しい社外取締役を探すのが順序だと思います。このプロセスの不足から、ご意見頂戴の活用にとどまり、せっかくの社外取締役が宝の持ち腐れになっているケースが少なくないように感じます。

また、経営の大きな方向性を決めるのが取締役会の基本的役割であることに異存はありませんが、当期業績を追い掛け、任期中の無失策に拘泥する業務執行陣に、客観性と説得力のある中長期の予測と計画を期待するのは、なかなか難しいと思われます。

仮に社外取締役が指摘・要求しても業務執行陣の当事者能力に難があれば実現できませんし、後日の選任議案に反対するのでは時機を逸します。経営経験のある社外取締役が指南役を務めれば、業務執行を担当することになり、社外性と抵触する懸念もあります。

企業のガバナンス実務で、「経営の大きな方向性を決める取締役会」が実現しないのは、こうした事情があるからだと私は考えています。

一方、女性取締役の積極的な登用は、働き方改革や性差の撤廃を進める期間は、意図的に下駄をはかせても導入すべきだろうと思います。事業内容や業態によって必要性の濃淡はあると思いますが、男性ビジネスマン以外のステークホルダーの代弁者として、期待役割は非常に大きいでしょう。

社外取締役にしろ女性取締役にしろ、取締役を多様化し、異なる経験や価値観から光を当て、他人の意見に本気で耳を傾ける重要性を、取締役全員が共有できることが前提となります。自分では多少の自信があっても、大事のことは専門家や先輩に広く意見を聞くことが大切ですし、他人の話を聴く姿勢があれば周囲から信頼され、自分の見聞も広がります。取締役を多様化の成否は、役員の度量にかかっているように思います。