創業社長と雇われ社長の違い

12月1日付け日本経済新聞の記事「創業者株、3倍高の真意 経営者=大株主のひろがりも」が目にとまりました。8月15日の本ブログに「オーナー企業の株価値上がり率が高い理由」という記事を掲載しましたが、同じ現象を別の角度から解説する記事で、たいへん参考になります。

同記事によりますと、米運用会社・ホライゾン・キネティクスが算出する「日本創業者株価指数」はアベノミクス相場で3.3倍に跳ね上がったそうです。運用会社の関係者による「利益率の高いビジネスを手掛けるのがオーナー企業の強みだ」とのコメントが添えられています。トップが即断即決する組織であれば、既存の事業を売却し、その利益で将来有望な事業編成に組み替えることも容易ですし、なによりも意思決定のスピードと仕事への思い入れが違うと思います。

これで思い出したのはGE社の経営です。GEジャパン代表取締役、GEキャピタル社長兼CEOの安渕 聖司氏の著書「GEの口ぐせ」では、GEはミッションステートメントを堅持するものの、個々の事業の中身は世の中の変化に応じて入れ替えるものと考えること、歴代のCEOは全員社内出身者で平均13.7年就任していることが特徴として述べられています。著者の説明によれば、開発から保守までのロングライフサイクルのビジネスでCEOは、最初から最後まで結果を出し、長期で評価されるべきである、という考え方が基本にあり、それゆえ40歳代の若いCEOを就任させるようです。

オーナー企業でなくても、企業の持続可能な成長、企業価値の向上をはかることは可能なのでしょうが、日本企業の平均は7年くらい、国際的な平均でも6年くらいといわれる社長の就任期間で、大胆な事業の入れ替えを見届けるのは難しいかもしれません。一説によれば10年を超えて就任するトップの方が企業価値を伸ばせるものの、次の代やさらに次の代で反動(企業価値の毀損)が現れると言われています。そこで優良な欧米企業では、長期政権を基本としながらも、サクセッションプラン等を通じて現トップと次世代候補者たちが議論し、経営環境の認識、ビジョンや価値観を引き継ぐ機会を設けることで、政権交代時の反動を回避する手法が取られていると聞きます。

上記の新聞記事では、「ストックオプションや信託型など株式報酬制度が整備され、経営とオーナー企業の良さを取り込む土壌が整ってきた」、「焦点は、こうしたオーナー企業の魅力がサラリーマン経営者にも広がるかどうかだ」と指摘しています。報酬に長期間の業績や株価を反映させる仕組みを導入することもひとつの方法だとは思いますが、経営トップの就任期間が中途半端な長さであれば、大胆な改造や損失計上は避け、既存の収益モデルの中で姑息な手段で利益をねん出し続ける努力に走る経営が増えるのではないでしょうか。

創業社長と雇われ社長の違いは簡単に埋まりません。現在は報酬制度の見直しがブームのようですが、雇われ社長、サラリーマン経営者の企業では、現経営陣が逃げ切りを図っていると株主の目に映らないよう、身を切る覚悟の構造改革プランとセットで企業価値の向上を図るべきですし、株主・投資家も生み出す企業価値に見合った報酬制度を考える必要があると思います。