副業許可の問題

最近、「主たる勤務先の会社による副業許可を緩和すべき」という論調の記事や情報発信を目にする機会が増えました。生活維持の補充的収入、働き手の意識の変化、社員の多様性戦略など、その動機は様々なようです。

就業規則で兼業を全面的に禁止するのは合理性がなく、会社による処分の有効性を争う裁判も、これまでかなりの件数が発生しています。総じていえば、①疲労などで仕事に影響がでるほど負担の多い副業(例:平日深夜の長時間労働)、②仕事とライバル関係になる副業(例:競合商品を取り扱う個人ショップ経営)、③反社会的な副業(例:麻薬販売、反社会的勢力との接点)などが、会社が制限しても合理性ありと裁判所が認める判断基準だといわれています。

「勤務時間外はプライベートの時間なので会社が拘束するのはおかしい」という社員側の主張を聞きますが、有効な雇用契約を締結すれば、36協定の適用を受け、有効な残業命令に従う義務が生じますし、正社員ならば転勤命令も原則として応じる義務があります。残業や転勤が一切ない労働契約なら別ですが、通常は退社予定時刻の一時間後からパートタイマーで働く副業は認めがたいことになりますし、副業を理由として転勤拒否もできないことになります。これらは個々の副業の内容を審査して判断することになると思います。

また、「会社の社会的信用を毀損する仕事は困る」という会社側の主張も、なにがそれに該当するか社会の判断基準が変化しますので、意見が対立する可能性があります。女子社員が会社の許可なく夜間にキャバクラで3時間働いていたケースがありました。いまやテレビでも登場する認知された商売であり、疲労が残るほどの労働でもないから副業禁止する必要はないと会社は判断しようとしました。しかし、同社の女子社員の中から、「世間から『あの子』と同じに見られては困るという」という意見が強く出たため、とても困ったケースを経験したことがあります。

マスコミやネットでは、知的な副業がきれいに語られているようですが、実務では労働系の副業が多いように感じますし、母子家庭や配偶者の借金など切羽詰まった状況での許可申請も少なくありません。これらを一緒に議論することがどうかのかな? と思うこともあります。私自身も勤務先の会社から兼業を認めてもらった時期がありました。活動の場面が多様化して生活が充実したのも事実です。ひとりひとりの人生にとって大事なテーマであると同時に、職場内での公平感も大事なマネージメント要素ですので、状況を分けて丁寧に議論されることを望みます。