働き方改革の真の阻害要因

8月15日付け日本経済新聞朝刊の「Opinion 複眼」に掲載されたフランツ・ヴァルデンベルガー氏(ドイツ日本研究所所長)のご意見が、働き方改革の真の阻害要因を見事に指摘されています。ヴァルデンベルガー氏のご指摘は、コンサルタントの経験で私が感じていることと見事に一致しています。ポイントを引用して私のコメントを付けさせてもらいます。

第一は、日本は自分の時間を大切にする教育をしておらず、学校中心の経験のまま就職すると会社がすべてになってしまい、自由な時間があってもどうしたらいいかわからない、という指摘です。組織に帰属して上司者の指示・評価に従属することを「成功」と考える価値観が親の代から受け継がれ、この点に違和感を感じない企業関係者(特に一定年齢以上の男性社員)が支配的勢力を占めています。これに染まってしまう若年の男女社員が心配です。

第二は、日本はジョブ型雇用でないため、余裕のない人員配置になっており、休みたくても休めない、という指摘です。マネジメントと労働の区別、職域別労働組合の存在、職務記述書のない日本企業では、管理職を目指す多能工型の社員がいまだに重宝がられ、他人の業務を穴埋めしたり手伝ったりする働き方が「チームワーク」と評価されます。家族の世話や通学など制約条件を抱えた労働力を組み合わせるには、経営が構造レベルで考え、管理が臨機応変に運用する、2段階の配慮が必要です。

第三は、日本は内部昇格しか選択肢がないので、会社への忠誠心の競争となってしまい、上下関係が重視され、サービス残業が横行したり、成果よりもどれほど頑張ったかが重視されることもある、という指摘です。複数の業界や企業で経験を積んだ人材を適材適所で起用する組織が増えてきましたが、過剰労働と忠誠心や滅私奉公を混同している企業がいまだに多くを占めます。管理職昇進をエサにする過剰労働の動機づけは、早急に排除すべき組織病です。

第四は、日本は役割分担を守らない、相談・調整にすごく時間を割く、成功しても評価されないが失敗したときの罰が大きい、失敗を含めて仕事を任せることをしない、という指摘です。モーレツ社員が評価された高度成長期には役割・権限・責任を曖昧にする組織運営が便利でしたが、私生活とのバランスや健康維持を前提とした働き方改革では、真逆な組織運営となってしまいます。仕事に多くの時間を割く層と決められた分だけ働く層とは、処遇を含めて明確に区別すべきだと思います。

ヴァルデンベルガー氏が提言されるとおり、一定期間の休暇取得を強制するなど、従来の働き方を否定する楔(くさび)をいくつか打ち込み、時間経過のなかで意識や行動を変えるのが有効と私も考えます。新制度を導入しても社員の反応がイマイチという企業は、真の要因が制度以外の部分にある可能性を考える必要があります。上記の一から四の指摘にどのように取り組むか、組織文化の根本的な変革に取り組みのステージを上げることをお勧めします。