代表の視点

もっと理解したい方へ
私が以前寄稿した原稿に手を入れて掲載しました。この原稿には代表の視点が詰まっています。是非、ご一読ください

その1 ガバナンス、コンプライアンス、CSRに万能の処方箋はない

ガバナンス、コンプライアンス、CSRはつかみどころのない、どこまでやる必要があるのかわからない、という印象をお持ちではないでしょうか。書店に行っても決定版の解説本やガイドラインは存在しません。登場する言葉もカタカナばかりで、現実の仕事と結びつきません。

組織によって状況も方策も異なるので、一律の強制が難しいテーマ領域です。そこで、まず原則論や最善の取り組みが示され、それらを参考に各企業が有効な施策を独自に創造するアプローチが採られます。ガイドラインなど表面的には義務ではない形をとりつつも、対応しなければ説明責任を求めて一定の社会目的に方向付けるのが真の狙いです。

こうした現象をハードローからソフトローへの転換と表現します。法律や業界ルールなどのハードローは、最低限の義務や禁止事項のことが多く、それさえ遵守すれば制裁を受けません。一方、ソフトローに正解はありません。たとえば、ビジョン、中長期計画、課題認識を可視化して、ステークホルダーとの対話と学習を通じて磨きをかける、そうしたオープンな経営姿勢が高く評価されます。失敗する組織は、ステークホルダーに閉鎖的な姿勢をとったり、自社の正当性を一方的に強調しすぎたりする傾向があります。

何を目指しているか、経営資源はどのような状況か、重要な課題と対策はなにか、といった経営の根幹を開示・説明せず、大丈夫です、安心してください、と繰り替えしているだけでは支持率が下がるのも当然でしょう。ガバナンス、コンプライアンス、CSRは、失敗や誤算を学習機会と位置付け、透明性を維持して改善し続ける組織の開放性と胆力が成功のカギを握ります。

その2 なぜ取り組むのか、どこまで取り組む必要があるのか

「ガバナンス、コンプライアンス、CSRの諸施策を次々に導入したので業績や企業価値の向上が期待できる」と発言する経営者にときどき出会います。でも、そんな魔法みたいな都合の良い話があるはずありません。企業価値の向上につながる創意工夫や病巣を切り取る大手術を重ねなければ「本物」にはなれません。

誤解している経営者はすぐにわかります。当社は担当役員の選任、委員会の設置、行動規範の制定、内部通報チャネル、教育や監査の強化など十分な手当てを尽くして高く評価されている、と胸を張るからです。これらは経営に求められる最低限の品質保証に過ぎず、自動車の車検の保安基準と同じような意味です。車検に合格しても日々のメンテナンスや安全運転を怠っては、交通事故は避けられません。

事業環境も役員・従業員も変わりゆくなかで、企業が安全運転を続けることは至難の業です。ルールや仕組みを作れば誰でも同じように動いてくれるというのは経営者の幻想にすぎません。しつこく注意し続けなければ人間は易き方向へ緩みます。一人ひとり能力や価値観も違います。いわゆる体制の整備は「世間並み」で構いませんので、人間のメンテナンスや安全運転の教育・監視、危険箇所での安全柵(ガートーレール)の強化に残りの経営資源を投入すべきです。

ここで重要なのは、ガバナンス、コンプライアンス、リスク管理を特別なイベントとせず、現場のマネジメントに落とし込み、日々の業務のなかで自然に実践されるよう方向づけることです。それを管理職、内部監査、経営が定期的にモニタリングして、レビューと改善を続けることがステークホルダーの要請なのです。当たり前のPDCAを愚直に回し続けることが、責任ある経営だと私は思います。

その3 残念なコンプライアンス活動とは

行動規範を作ってコンプライアンス研修や監査を繰り返しているのに不祥事が以前より増えてしまった、といった相談があとをたちません。組織は価値観や利害関係の異なる人間の営みです。ルールだけで動いているわけではありません。感情に走ったり自分を正当化したり、人間関係のひずみから相談のタイミングを逃したしてしまうこともあるでしょう。それが普通の人間の姿です。

人間は少しでも楽をしたいので、バレなければ手を抜く傾向があります。不安から逃げたいので自分の都合のよいように現実を解釈する傾向もあります。組織に影響力の強い人がいれば自分に火の粉が降らないよう服従してしまうこともあるでしょう。ミスしないよう一点に集中すると他の問題が目に入らない認知能力の限界もあります。自分を認めてほめてくれる人には心を開き、相談もします。でも、話も聞いてくれず上から目線で命令する人に、大事な相談をするはずがありません。

残念なコンプラインス活動は、こうした「人間の甘さや弱さ」を考慮せず、「ルールを守るのは当たり前だ」、「問題があれば報告せよ」と上から目線で命令します。人間を機械のように一律に扱い、システムへの順応を強要するのです。これを「経営の建前」と理解した現場は、問題があっても怒られると思って隠してしまいます。ましてや最初から他人事と考えている現場は、自分の行動に置き換えて注意を払うことなどするわけがありません。

社員にも企業にも共通の利益となるコンプラインス活動とは、「人間の甘さや弱さ」を前面に押し出し、社員を誘惑から守る安全柵(ガートーレール)を充実したうえで、守らないと自分がどのように損するか、どうすればよいかを、現場の目線で具体的に教え込むことだと私は考えています。適切な行動を教え込み、社員を徹底的に守ることで会社の安定と成長を図るコンプラインス活動、それが理想ではないでしょうか。

もっと理解したい方へ
私が以前寄稿した原稿に手を入れて掲載しました。この原稿には代表の視点が詰まっています。是非、ご一読ください