他者と違うことを許容しない組織

生まれつき茶色い髪を黒く染めるように教諭らから強要され、不登校になった大阪市の府立高校3年生の女子生徒が「指導の名のもとに行われたいじめだ」として、監督自治体である大阪府に損害賠償を求める訴えを大阪地裁に提起したとのマスコミ報道がありました。

報道(東京新聞)によれば生徒側の主張は次の通りです。
・ 生徒は中学時代も黒染めを強要されて心を痛めたため、高校入学前に母親が学校に配慮を申し入れたが無視された。
・ 入学前から黒染めを指示され、入学後も1~2週間ごとに執拗に指導された。
・ 2年生進級時には染色剤の副作用で頭皮が炎症を起こして毛髪もボロボロになり、美容師からも中止を助言されたため、母親が学校に抗議したが、学校のルールと取り合わなかった。
・ 学校側は「黒染めすると約束するまで帰さへんで」「母子家庭だから茶髪にしているのか」と詰問し、帰宅した生徒は自分の責任ではないと泣き、過呼吸で倒れ、救急車で搬送されることもあった。
・ 度重なる黒染めによって、髪が脱色して金髪のようになっても、教員らは「アウト」と揶揄するような言い方でやり直しを命じ続けた。
・ 2年生の9月、「黒染めしないなら学校に来る必要はない」と宣告され、生徒は不登校に陥った。
・ 学校は、頭髪を理由に文化祭や修学旅行に参加させず、名簿から生徒の名前を消した。
・ 生徒の代理人弁護士が学校に改善を申し入れたところ、学校側は「たとえ金髪の外国人留学生でも黒染めさせる」とかたくなだった。

学校側の反論が公表されていないので真偽のほどはわかりませんが、仮に事実であれば、抵抗するすべもなく痛めつけられた生徒の心情を思うと涙が出ます。教育機関の何に値しないどころか、支配的立場と密室性を悪用した人権侵害にほかならないと私は解釈しています。この点、学校関係者のみなさんは反論があれば反論し、説明責任を果たしていただきたいです。

閉鎖的な組織では、一定の権限を付与された者が万能感を覚え、また組織トップの意向を忖度していると自分を正当化し、単なるルールを不可侵の教義と強弁して、命令に従わない者を制裁・排除することによって、自身の影響力を誇示するケースが発生します。組織の運営は、こうした暴走者が出ることを常に想定しなければなりません。

ところで、校長や他の教師たちは、こうした黒染めの強要をやりすぎと感じなかったのでしょうか。違和感を感じながらも黙っていたならば人権侵害に加担したのも同じです。一部の暴走を静止して正気に回復させる責任は、校長、教頭、教員が等しく負っています。もし、傍観者として人権侵害に加担していたならば、どうして教育の仕事に就く資格があると言えるでしょうか。この点についても、当事者の説明をぜひお聞きしたいです。

熱血指導、規律維持といった言葉は、学校サイドの常套句です。本件は「指導に名を借りた精神的暴力」以外の何物でもないと解釈すべき可能性が高いと考えます。この事件は、民間企業のパワハラと酷似しています。教員による生徒へのパワハラ事件と考えた方が本質が伝わるかもしれません。他校で起きている生徒間のいじめへの対応不足から生徒を自殺に追いやる事態も、安全配慮義務という観点では、民間企業と変わることはないはずですし、むしろそれ以上に厳格な配慮が求められると私は思います。

規律違反が程度を超えているかどうか、指導や制裁が妥当かどうかの判断は、個人によってバラツキがありますし、上記で指摘した暴走が心配されます。民間も学校も、規律違反の対応や制裁については一部の人間に任せず、外部の有識者も入れたガラス張りの委員会等で審議すべきだと私は考えています。

声を上げて抵抗できない生徒たちが、学校側の不適切な対応によって深く傷ついたり命を絶つ事態がこれ以上起きないよう心から祈ります。