人権監視法とビジネスとの関係

7月10日付け日経新聞朝刊の「リーガルの窓」の「人権監視法 海外リスクに」をお読みになりましたか?  

自社の事業やサプライチェーンにおいて強制労働や児童労働を発生させない措置を講じることやその効果の検証・開示を義務付けたり、奴隷労働で採掘・生産した産品の輸入を制限したりする欧米各国の動向が説明されています。記事中の「日本企業は海外当局の動向に気づくのが遅れ、価格カルテルや贈賄行為で次々に摘発された。人権監視法でも二の舞になる恐れがある」との蔵元左近弁護士のご指摘は正鵠を射たもので、私もまったく同感です。

その基調となる国連「ビジネスと人権に関する指導原則」(2011年)も、本格的な経営の議論に乗せた日本企業を私は知りません。こうした日本企業の人権不感症は、権力による抑圧と戦った国民規模の歴史を持たないこと、ならびにビジネスによる人権侵害を監視・改善要求するNGOや倫理的消費を促進するNGOの存在感が乏しいことが原因であると私は考えています。

国際ルールでは、人権侵害を引き起こさない、調達取引等を通じて間接的に加担しない、改善のために影響力を行使する、被害を救済するメカニズムを持つ、といったことが企業経営に求められます。その反面、いじめ、ハラスメント、過労死、外国人研修生、外国人女性の性的商品化など、諸外国から厳しい批判を受ける人権問題をたくさん抱えているのが日本の社会です。

日本企業の経営層にCSR調達を説明すると、なぜ必要なのか、株主や消費者が本当に求めているのか、業績向上に役立つのか、といった質問を受けます。地球環境、人権・労働、腐敗防止に配慮している企業の株式や製品を積極的に購入する人々が見当たらない我が国の状況で、経営者にそれを求めるのは少々酷かもしれません。疑問に思う気持ちもよくわかります。国際ルールに対応する必要性を経営者が明確に実感できる社会に変革することも、併せて考えていかなければいけないですね。