予想外の事態に直面した際の業務手順

9月10日、東京・渋谷区の線路沿いのボクシングジムが火災を起こし、その真横で停車した小田急小田原線の電車の2両目に火が燃え移り、車両の屋根15平方メートルが焼ける事故が発生しました。

300人の乗客に被害がなかったのは幸いですが、投稿映像を見ると、火災現場の真横で乗客を乗せたまま電車が約8分間停止し、運転士は安全確認後に発車したものの、消防隊員らに燃え移りを知らされて123m移動した場所で停車し、そのあと乗客の避難に着手し、避難完了まで約30分を要したという経緯です。

現時点での情報では、小田急電鉄の運輸指令所にも消防から連絡が入ったものの、運輸指令所から乗務員に指示を出す前に、現場に駆けつけた警察官が近くの踏切に設置された非常停止ボタンを押したため、電車の自動ブレーキが作動し、たまたま火災現場の真横に緊急停止してしまったということです。

そもそも緊急停止の可能場所はどのように判断・決定される仕組みになっていたのでしょうか。また、緊急停止後の点検・解除については手順が用意され、おそらく運輸指令所の指示をまって動くことになっていたと思われますが、乗務員による現場・現実の確認、運輸指令所との双方向の情報共有がどこまで適切に確保されていたのか、今後の調査結果の公表を注視したいと思います。

2015年に発覚した横浜のマンション杭打ちデータ偽装事件でも、「データ欠落発生時の対応の不備」といった、正常な処理から外れた場合の対応手順の甘さが親会社の調査報告で公表されています。

古くは、2000年に発覚した雪印集団食中毒事件も、工場で3時間の停電が発生し、タンク内の脱脂乳が20度以上で約4時間も滞留したため、黄色ブドウ球菌が増殖して毒素が発生したことが直接の原因とされています。滞留した原料は廃棄すべきところ、殺菌装置で黄色ブドウ球菌を死滅させれば安全と判断して脱脂粉乳を製造したこと、1955年にも別工場で同様の食中毒事件を起こしていることから、ブランドの致命的な失墜につながりました。これも想定外の事態への対応を誤った典型例です。

普段から経験していない想定外の事態に直面すると、パニックになって誤った措置をとったり、勘と経験だけで再稼働したりして大きな事件に発展しかねません。また、現場にいない指令部門が間接な情報や高度に自動化されたシステムで指揮を執ると、致命的な情報の漏れが生じかねません。

企業の社会的責任をまっとうするには、想定外の事態に備えて、顧客の安全確保、設備の再稼働等の手順を明確にするとともに、指令部門と現場が緊密に情報を確認しあう運用を平素からシミュレーションし、情報の穴があれば手当てしておくリスク管理が求められます。その重要性を改めて痛感するニュースでした。