不祥事報道にも冷静な投資家行動

12月9日付けの日本経済新聞に、社債投資家による不祥事銘柄買いの記事が掲載されていました。「安値拾いの好機」と言わんばかりに、データ介在を起こした銘柄に買いが入り、価格下落も限定的となってきたとの報道です。背景には、日銀の大規模金融緩和で社債利回りが低下し、運用難のなかでリスクを取らざるを得ない投資事情があるようです。

私が注目したのは、データ改ざんの先駆けとなった神戸製鋼所は顧客からの賠償請求などの見通しがつきにくく、社債投資家も右往左往したが、特採などの業界慣行が明らかになって冷静さを取り戻すと、地銀などの投げ売りで社債利回りが急上昇したのを見て逆張りする投資家が増え、不祥事でスプレッドが拡大してもすぐに縮小に転じた、という解説部分です。

不祥事と報道されている企業には、業績や事業継続への影響が不透明なケースもありますが、逸脱が軽微で顧客との調整もほぼ済んでいると思われるケースもあります。十把ひとからげな報道にも関わらず、投資家は個々のケースに応じて冷静に評価している様子が伺えます。判断力の高いステークホルダーは風説に流されませんし、私はこうした動きを歓迎します。

東京商工リサーチが4月公表した「2016年度「コンプライアンス違反」倒産動向」によれば、2016年度(2016年4月-2017年3月)に業法・法令違反や脱税、粉飾決算、偽装など「コンプライアンス違反」が一因になった倒産は178件(前年度191件)発生、2年連続で前年度を下回ったそうで、その背景の一つとして、中小企業のリスク状況を地域金融機関が支援する動きが増加している点を上げています。

私は仕事柄、危難に直面した企業がいかに早く回復し、より健全で強くなっていただくかという観点で不祥事を考えます。派手なマスコミ報道が続くと、あの有名企業も終焉かと過剰反応する方もいますが、金融や投資の面で冷静に協力・支援してくださる方々も必ずいらっしゃいます。そこには張らく人々の生活やお客様の事業継続の必要性があるからです。復旧・再生の危機対応シナリオを作る際も、そうした協力者の納得を得られる骨太な説明にすることを心がけています。

不祥事のマスコミ報道は一つの見方にすぎません。そこにかかわる人々の思惑や善意が錯綜し、複雑な人間模様が展開されます。それらは公表されることはありませんが、企業をどのように復旧・復旧させるか、お客様や社員を守るか、良識ある大人が知恵をひねり合う、大きなドラマが展開します。いつか、そうした舞台裏をお話する機会があればと思います。