ビジネスと人権ロイヤーズネットワークのご紹介

一介のサラリーマンだった私にコンサルタントの扉をひらいてくれた恩人のひとりに弁護士の齊藤誠先生(弁護士法人斉藤法律事務所)がいらっしゃいます。最近では再審決定を勝ち取った松橋事件弁護団の牽引者としてTV番組でも取り上げられましたので、ご覧になった方も多いかと思います。警察の不正操作、国選弁護士の任務違反に怒り、私財と時間を投じて弁護士の使命を貫いた熱血漢の先生です。

齊藤先生は生活者や弱者の救済を基本に、熱帯雨林保護、企業の社会的責任(CSR)と内部統制、男女共同参画、第三者委員会ガイドラインなど、弁護士界の業務改革のプロデューサーとして、立派な実績を残され、2017年、Lawyer Monthlyより人権分野でLawyers of the Yearを受賞されました。弁護士には優秀な舞台監督は多いのですが、グローバルな流れを踏まえ、ミッション、コンセプトから人材を集められる方は多くありません。私が心から尊敬する先輩です。

その斎藤先生が仕掛け人となって昨秋、企業法務や人権擁護までそれぞれの専門分野で活動している弁護士・研究者・企業関係者などの法律専門家が、その専門性を活かしつつ、コレクティブアクションとして結成した情報共有ネットワーク「ビジネスと人権ロイヤーズネットワーク(BHR Lawyers)」の活動を開始され、高度な知見・経験をお持ちの法律家や活動家が結集しています。この記事を読まれた方にも是非興味を持って登録していただきたいと思います。

斎藤先生と私の出会いは、2003年と記憶していますが、日弁連・CSRと内部統制PTの講演会で、勤務先である富士ゼロックスでの取り組みを紹介する機会をいただいたことにあります。当時は企業不祥事の予防・対策が企業法務の新しい任務に加わり、担当者となった私は、1992年COSOフレームワークを参考に内部統制システムの整備を試行錯誤していました。ただ、株主資本主義が席巻する米国の論調には法務担当としては違和感を感じており、欧州社会や国際NGOのCSRの動向に、将来の重要性を直感していました。

その講演会でパネリストとして同席して下さった弁護士の久保利英明先生(日比谷パーク法律事務所)は、「日弁連もパンドラの箱を開けてしまいましたね」と笑いながら、ナオミ・クラインの名著「No Brand」(邦訳題: ブランドなんて、いらない)を紹介しながら、CSRの誕生、地球環境問題、反グローバリズムなど、政府より影響力を持つようなった多国籍企業の社会に対するビジネスの新規範と影響をお話してくださり、私も大変勉強になりました。

CSR、ESG投資行動、そしてSDG’s(政府・NGO・企業が2030年までに共通に課題すべき社会課題目標)と続く一連のムーブメントは、実はその時点で主要論点が決まっていたといって過言ではありません。特にSDG’sは日本企業にとっても東京オリンピック以降の経営モデル変革にとって重要な価値フレームになるでしょう。

そうしたなか国連は90年代半ばから、すべての基礎にある重要テーマとして「ビジネスと人権」の整理に取り組み、紆余曲折を経ながら2011年に「ビジネスと人権に関する指導原則」を採択しました。「ビジネスと人権ロイヤーズネットワーク(BHR Lawyers)」の活動は、こうした歴史的背景を踏まえた、保守本流の流れを支える重要なものです。

社会制度やビジネスは人間の幸せのための手段です。その意義を一人でも多くの方に理解いただき、人権に立脚した持続可能、真の公平にむけて人々があたりまえに行動する社会になって欲しいと思います。特に法律家の皆さんは、ホームページにあるとおり、ビジネスロイヤー、ヒューマンライツロイヤーいずれの立場で活動を行う法律専門家であっても、様々な角度から「ビジネスと人権」の問題に光を照らし問題解決に向け積極的な役割を果たすという観点で「BHR (Business and Human Rights) ロイヤー」を目指して欲しいですね。ビジネスと人権ロイヤーズネットワーク(BHR Lawyers)の今後の発展と活躍に期待します。