コーポレートガバナンスと重要政策・基幹事業の見直し

持続可能な成長を企業がはかるうえで最も重要なのは、社会構造の変化を想定して既存の重要政策や基幹事業を見直す実行力だと思います。それも中長期計画の修正というレベルではなく、数十年後の社会構造を想定してそこを起点に現在を振り返って今何をすべきかを考えるバックキャスティング方式で経営の議論を深めるべきだと思います。

グローバル化はもちろん、国内事業に限っても人口減少・高齢化・生産労働人口減少の影響によって約25年後以降の日本社会の構造は激変することが多方面から指摘されています。人口動態調査に基づく推計ですからほぼその通りになるのでしょう。首都圏以外では、行政サービスが提供不能な地域が相当数発生すると予想されていますし、水・食料・資源の国際競争の激化すると考えられています。

25年後といえば、高卒入社が43歳、大卒入社が47歳です。現在40歳の社員は年金生活が始まる時期にあたります。10年後、20年後に足かせとなる可能性のある既存の政策は見直す必要に迫られるでしょう。しかし、企業や行政において、既存の政策を見直すことは新しい政策を決定・導入する以上にハードルの高い話です。

例えば、7月23日版産経新聞によれば、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを一定価格で買い取る「固定価格買い取り制度」で、買い取り期間が終わる2050年度までの買い取り総額が累計で94兆円に達することが22日、電力中央研究所の試算で分かったと報道されています。なんと再エネだけで国家予算に匹敵する数字です。いまから25年後、30年後の電力需要をどのように考えているのでしょうか。

国民の実質負担となる「賦課金」も、50年度に69兆円に達する見込みだそうですから、標準家庭で年間9,500円の再エネ賦課金のさらなる増額は必至で、国民の理解が得られるとは思えません。そもそも再エネ発電量のうちどれだけの電力が実際に使用され、余剰は発生していないのでしょうか。関連装置メーカーや大型施設の発電事業者のかなりの割合が中国系企業で、国民の負担がそちらに流れているのもいまや公知の事実です。また、私が電力会社の関係者から聞いた話では、40円~21円という買取単価は国際的に見ても信じがたい水準であり、安定供給が保証されない再生可能エネルギーは電力会社も扱いに困っているそうです。

つまり、福島第1原発事故を受けて2012年7月に民主党政権下でスタートした「固定価格買い取り制度」は事実上破たんしており、放置するほど国民の「被害」が増加することがわかっていながら、誰も「中止命令」を発動できない状況に至っています。東芝によるウエスチングハウス買収も、いまから考えれば買収の前後で一旦停止する機会はあったのだと思います。

組織では政策を決定する段階では慎重を期しますが、ひとたび動き出した政策は決めた責任者以外は「他人事」であって、しかも当初予想しなかった展開で暴走したり、負担能力を超える副作用を生むことがあります。コーポレートガバナンス・コードなどでも意思決定の問題は取り上げますが、これからの時代は事業環境が激変しますから、重要政策や基幹事業の根本的なレビューと将来を見据えた大胆な見直しを実行できる体制が真の経営責任であると私は考えています。