コンプライアンス担当者が参考にすべき不祥事ニュース

9月10日、正規の手続を経ずに無断で横断歩道や道路標識を設置したとして、兵庫県警は男性巡査部長(56歳)を虚偽公文書作成・同行使や道路交通法違反などの疑いで書類送検し、停職一ヶ月の懲戒処分としたことが報道されました。本人は依願退職、設置された横断歩道などは正式に手続をして今後もそのまま使用するとのことです。

コンプライアンスの担当者は、この不自然な行動の背景・理由にパッと考えをめぐらせていただきたいですね。報道では、「新たに来た上司が業務に非協力的だったのが不正の動機で、一人だけで手続するのが不安で、いやな仕事を後回しにし、あげく放置してしまった結果、正規の手続が取れなかった」と説明されています。では、私が考えた点を以下に整理してみます。

① まず、県警という組織の上位下達、威圧性、閉鎖性が思い浮かびます。威圧的、閉鎖的な組織は、孤立と隠蔽につながります。すべての県警がそうだとは申しませんが、報道内容の前後からは、縦割りで統制の強い組織特有の行動傾向が感じられます。

② 新たに来た上司が業務に非協力的だった、とあります。ボカした表現ではありますが、上司の性格、いじめ、経験不足、多忙など何らかの事情があったのでしょう。縦割り組織で上司とのコミュニケーションが取れなかったことが、本件の不幸だと思います。

③ 一人だけで手続するのが不安、とあります。56歳の年齢、おそらく現場から内勤への異動などで、かえって周囲に相談や協力依頼ができなかったと想像できます。ベテラン社員ほど、なんでもできるとの周囲の固定観念、任せっぱなしから、管理の死角ができてしまい、不正を招くことが珍しくありません。

④ いやな仕事を後回しにして放置した結果、正規の手続が取れなかった、とあります。おそらく、上司や周囲にバレないと感じさせる職場の要因があったのだと思います。質問があっても口頭の回答で欺き続けるものの、第三者の強制的なチェックで発覚するケースは非常に多いです。

どうでしょうか。一見すると馬鹿げた不祥事に思えても、組織風土、人間の弱さ、上司との関係、職場環境などが折り重なって発生していることがわかると思います。つまり、皆さんの組織や職場でも起こり得る、典型的な不祥事の形がここにあります。

コンプライアンス担当者の皆さんは、報道で接する不祥事ニュースのわかりやすい解説を組織内に情報発信してください。世間を騒がす大事件よりも、この不祥事ニュースのように身近に感じる事例が現場の理解を深めます。

それにしても、定年まで勤め上げた職業人生をこんなことで棒に振ってしまったご本人が気の毒でなりません。そうした犠牲者を組織から出さないことがコンプライアンス担当者の使命です。