がんばれ! ヤマトホールディングス

ヤマト運輸を傘下に持つヤマトホールディングスの発表によれば、2017年4-6月の連結決算は営業利益が100億円の赤字(前年同期は74億円の黒字)、純利益は79億円の赤字(同36億円の黒字)だったようです。さらに2018年3月期の連結純利益は前期比34%減の120億円になる見通しで、従来予想を50億円下回る下方修正になるそうです。

第一四半期の売上高が前年同期比4.0%増なのに赤字に転落した要因は、未払いの残業代52億円を一時金として計上したほか、インターネット通販の拡大で宅配便の取扱個数が5・1%増の4億5000万個となったことに伴って配送の外部委託費が増えたためと説明されています。また、年度の宅配取扱個数の減少幅が従来予想の半分程度に収まりそうなので、大口顧客との単価交渉で2割程度増額できれば通期で黒字化が可能で、V字回復も手が届く見込みとの報道もあります。

事業の変質・拡大を織り込まず、ずさんな労務管理で過剰労働や賃金不払いを招いた事実には、すでに各方面から批判が集中しており、私もそれが当然と考えます。しかし、未払賃金の精算と名ばかりの再発防止策でお茶を濁す企業が多いなか、大口取引先との値上げ交渉、サービス内容変更および運賃改定、再配達受付の締め切り時刻の変更、宅急便の配達時間帯の指定枠の変更、宅配ロッカー設置の本格化など、会社の存亡をかけて構造的な解決をはかる経営姿勢を私は高く評価しています。

今回、宅配便各社が直面している問題は、業界の過剰競争のように見えますが、その背景には、過剰サービスを受容する消費行動が存在します。適正な利益と健全な就業は「倫理的な消費」とセットで考える必要があり、企業だけを責めても問題は解決しません。政府は、ガバナンスや労働法制だけでなく、株式保有や消費行動を通じた市民による企業活動のコントロールを間接的に支援する、弱者にしわ寄せを生まない消費行動の在り方を小学校から教育メニューに組み込む等の政策をすみやかに導入して欲しいものです。

消費者基本法の第2条(基本理念)には「消費者の利益の擁護及び増進に関する総合的な施策(以下「消費者政策」という。)の推進は、~中略~ 消費者が自らの利益の擁護及び増進のため自主的かつ合理的に行動することができるよう消費者の自立を支援することを基本として行われなければならない。」とあります。消費者の自立、すなわち健全な消費行動はマルチ・ステークホルダーがwin-winの関係で持続可能に成長できることを目標に考える必要がある、それが国際的な共通認識となりつつあります。

今回の問題を構造的に解消するには、ネット通販大手の寡占化、ヤマト運輸の下請事業者で働く労働者の保護・救済など、多様な課題を検討しなければなりません。でも何よりも先に、ヤマトホールディングスが日本国民に投げかけた問題の本質を考え、倫理的で持続可能な消費行動に軌道修正する機会ととらえなければ、日本の社会は何も学習したことになりません。黙って踏ん張る経営陣の姿勢を私は拍手で応援しています。がんばれ! ヤマトホールディングス。そして、我々国民は「便利」という怠け者の標語を捨てて、丈夫で長持ちする社会システムを考えることが仕事ではないでしょうか。