【番外】NGT48ファン暴行事件の対応のまずさ

本件、私が日頃からフォローしている分野ではなく、知り合いのメディア関係者から助言を求められても十分回答できませんでした。その後、関連の報道に目を通してみますと、第三者委員会に対する誤解、調査結果公表の在り方があまりにひどいので筆を取りました。率直に言って、話になりません。今後本件を第三者委員会や危機対応の参考例や比較例とは考えない方がよろしいかと思います。

運営会社AKSの最大のミスは、自分たち運営会社の予防対策や発生後の危機対応も第三者委員会の調査対象に含まれ、暴行事件の被疑者と同様、「被告席」に座っていることをまったく理解していない点にあると思います。弁護士3名の第三者委員会の調査報告書でも、依頼された調査は「暴行事件の事実関係」としながら、結論において運営会社AKSの管理義務違反等を匂わせる内容となっています。

日弁連ガイドラインが定める第三者委員会は、「経営者等自身のためではなく、すべてのステーク・ホル ダーのために調査を実施し、それを対外公表することで、最終的には企業等の信頼と持続 可能性を回復すること」を目的とします。この点、運営会社AKSと第三者委員会との間で認識の共有がきちんと図られたのでしょうか。

また、調査結果の記者会見を開くのであれば、第三者委員会が説明役となるべきです。これは独立性を価値とする第三者委員会の当然の帰結です。ましてや、被害者が運営会社の対応に不信感を表明している今回の事態であれば、その点について選択の余地はなかったでしょう。

法律家による事実認定の文章は、「必ずしも〇〇とは断定できない」、「〇〇の疑いは残るが明確な証拠はない」といった、曖昧な表現が多用されます。今回の記者会見を拝見すると、運営会社の説明は、自社には甘く、他者(女性タレント)には厳しく解釈している印象でした。その意味でも、被告席にある素人の依頼者が調査結果を説明するなど、無茶苦茶なことだと考えていただきたいですね。その軽率な判断から、いい大人が責任逃れを言っているイメージを残してしまったと思います。

もうひとつ、危機対応のセオリーからみて、運営会社の発言や態度にも重大なミスがあります。運営会社のビジネスは、ファンが女性タレントと身近に接する魅力を差別化ポイントとして利用しているのですから、現実とフィクションを混同するファンが暴走しないよう、女性タレントの身辺の安全をはかる経営者の義務と責任がある、と世間の大方はみています。

いかにもオタクっぽい男性ファンの姿を報道で見ると暴走しかねないと感じますし、まだ分別のない年齢の女性タレントで金儲けしているのだから、昔の芸能プロダクションの社長のように我が子同様に守り育てる姿勢があって当然だろ、大事な娘を会社に預けている親の気持ちになってみろ、と還暦近い私は感じてしまいます。欧米の人権団体あたりならば、性やロリータの商業利用と厳しく批判するのではないでしょうか。本件はそのレベルの話です。

しかし、記者会見では、「女性タレントの一部に風紀の乱れがあった」とか「ファンとの不適切なつながりはあったが今回は不問に付す」といった、上から目線の勘違いが散見されました。私から見れば、会社や組織としての倫理観や責任感が微塵も感じられません。記者会見の途中で被害者から反論ツイートがあったのは、こうした根本的な誤りを指摘しているのだと思いますし、報道の本音もこのあたりにあるのではないでしょうか。

スポークスマンの選択も疑問です。今回の記者会見における運営会社のメンバー構成は立場・年齢・雰囲気が軽すぎて、問題を軽視している印象やそもそもマネジメント体制ができていない印象を与えてしまったと思います。そのうえ話の内容や表現も稚拙です。言葉や対応の端々から、大学生のサークル程度の組織なんだと私も受け取りました。組織の最高責任者が、率直な言葉で謝罪と反省を述べれば、もう少し印象が変わったことでしょう。

記者会見で大切なのは、世間の疑問や不信に対して何をどうこたえるか、結論として何を改め、誰が責任を取るのかを明確に準備することです。別の言い方をすれば、第三者委員会の調査結果を踏まえて、自分たちはどうするか、大人の分別を示すことです。そして今回のような想定外の質問や反論が飛び出したら、「会社としてきちんと回答するが事実関係が確認できていないので改めてお話する機会を設ける」と落ち着いて対応すればいいのです。その場で、投稿内容を読んで事実関係を否定するのは、いかにも「逃げているイメージ」を与えてしまいます。

最後に、今回の対応のまずさは、運営会社AKSの原因によるところ大ですが、第三者委員会を受任した弁護士の皆様も、もう少し配慮ある対応をしていただきたかったと感じました。特に事実認定に関しては、被害者の主張、被疑者の否認、関与メンバーの一部否認が並列的に記述されて、なんとでも解釈できる余地の残る内容です。状況証拠等を踏まえ、もうすこし突っ込めなかったのでしょうか。記者会見を運営会社に一任したのも誤判断のそしりを免れないでしょう。以上が私の感想です。